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佐藤輝明が内角高めを打つために修正すべき点は?「フォームを変える必要はない」/元巨人・岡崎郁に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代、勝負強いバッティングで球場を沸かせた、元巨人岡崎郁氏だ。

Q.阪神の佐藤輝明選手は内角高めを攻められるケースをよく見ますが、内角高めを打つために修正すべき点はどこでしょうか。(京都府・匿名希望・28歳)


2年目の今季はここまで安定した成績を残している佐藤輝


A.苦手な理由はスイング軌道。割り切って“内角高め”を捨てることも大事

 新人年の昨季は序盤からハイペースで本塁打を量産しましたが、後半にかけて失速。特に内角高めを執拗に攻められて苦労をしている印象でした。2年目の今季は、その攻めにもうまく対応しながら成績を残せています(6月15日時点=打率.275、13本塁打)。

 内角高めの球を打つのはどんな打者でも簡単ではありません。佐藤輝選手に限らず、どの選手にも言えることです。ただ、質問にあるように佐藤輝選手が特に内角高めを苦手にし、相手投手から攻められていたのは確かです。理由の一つとしてスイングの軌道が挙げられます。

 佐藤輝選手のような長距離打者は、トップの位置を深くとり(捕手寄り)、遠心力を使って打つので、後ろのスイング軌道が大きくなります。内角高めは、どのコースよりもポイントを前にして打たなければいけないので間に合いづらい。だから差し込まれる。これが内角高めを苦手とする大きな理由の一つだと思います。

 ただ、内角高めが打てないからといって、そこを克服することに重点を置いてしまうと、今まで打てていたコースが打てなくなる可能性があります。ですので、割り切って“内角高めを捨てる”ことも大事だと思います。ストライクゾーンのすべてを打てる人はそうそういませんし、3球続けて内角高めに投げられる投手もそうそういません。苦手な球を克服したいために、得意な球が打てなくなってしまう。これが一番危険です。

 佐藤輝選手は低めの球を得意とするローボールヒッターですが、これは右投げ左打ちの選手に多い傾向があります。理由としては利き手がボトムハンド(バットを握ったときの下にくる手。上にくる手がトップハンド)になるからです。ボトムハンドは車でいうハンドル。バットを操作する手です。ボトムハンドが利き手だとハンドル操作の性能がより良いので、目から距離が遠い低めの球でもアジャストすることができます。なので、利き手がトップハンドにくる右投げ左打ちの選手は低めがより得意な傾向にあります。その傾向が佐藤輝選手にも当てはまっているのではないのでしょうか。

現役時代、ヒットメーカーとして鳴らした篠塚の打撃


 私が現役のころだと、低めが得意な右投げ左打ちと言えばなんといっても篠塚(和典)さんですね。僕も低めの球を得意としていました。逆に左投げ左打ちの選手だと利き手がトップハンドにくるので、低めよりも高めが得意な傾向があります。左投げ左打ちの吉村(禎章)、駒田(徳広)は高めの球を打つのが非常に上手でした。

 佐藤輝選手に話を戻しますが、苦手な内角高めを打つためだけに打撃フォームを変えてしまうと、今持っている良さが消えてしまうので、思い切って内角高めは捨てたほうが良いと思います。9分割したストライクゾーンのうち1つは消して、あとの8つで勝負する。この考え方で良いのではないでしょうか。

●岡崎郁(おかざき・かおる)
1961年6月7日生まれ。大分県出身。右投左打。大分商高から80年ドラフト3位で巨人に入団し内野手としてプレー。96年限りで引退。現役生活16年の通算成績は1156試合出場、打率.260、63本塁打、384打点、23盗塁

『週刊ベースボール』2022年6月6日号(5月25日発売)より

写真=BBM
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