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プロ野球回顧録

「西武以外なら、どこが勝ってもいい」4強が0.5差にひしめく94年、空前絶後の超熱パ【プロ野球回顧録】

 

西武のV5を阻止するために


打倒西武に執念を燃やした仰木監督


「西武以外なら、どこが勝ってもいい」

 1994年のシーズン半ば、オリックス仰木彬監督はパ・リーグ5球団の思いを代弁するかのように言った。この年も西武の優勝を許すようなことになれば、他球団にとっては屈辱とも言うべきパ・リーグ初の5連覇が達成されてしまう。“西武王国”の牙城を崩すため、他球団は時に先発ローテーションを変更してまで、西武戦にエースをぶつけた。そして、史上最大級の“熱パ”が始まったのである。

 春先、エース・工藤公康の開幕4連敗など、投壊が不安視された西武だが、ここを何とか首位で乗り切ると、6月には2位・オリックスに6.5ゲーム差。またもや首位を独走し始める。

 ところがオールスター戦後、西武に試練がやってきた。ケガ人が続出し、後半戦突入直後の9試合はまさかの3勝6敗とつまずいた。そして、ついには8月7日、西武、ダイエー、オリックス、近鉄の4チームが0.5ゲーム差の中にひしめき合う大混戦になった。ほぼ毎日が“首位攻防戦”である。シーズン序盤なら過去にもあるが、8月に4チームが0.5差にひしめくのは珍しい。特に近鉄の猛追はすさまじく、首位と16ゲーム差からの逆襲だった。

 どのチームが、この混戦を抜け出すか注目が集まったが、やはりそれは優勝経験が豊富な西武だった。西武は9月2日、オリックスとの延長10回に及ぶ雨中の首位決戦を落とし、一度は首位陥落。だが、ここから底力を見せた。翌3日から破竹の11連勝。天王山と言われた9月16日からのオリックス4連戦(GS神戸)に4連勝し、混戦を抜け出した。

最後は近鉄を下して西武は5連覇を達成した


 10月2日、西武は藤井寺球場で近鉄を下してV5達成。5年連続となる全球団に勝ち越しての“完全V”は史上初の快挙でもあった。

「ホッとした。それしか言いようがないよ。当たり前のことが、どれだけ大変か。選手の精神力の勝利。褒めてやってください。MVP? 全員にあげたいですね」と顔を紅潮させて森祗晶監督は言ったが、その言葉どおり全員で勝ち取った栄冠だった。3割打者は不在ながら、チーム打率.279はリーグ2位。投手王国が崩壊したと言われながら、チーム防御率3.81はリーグ1位。突出した成績の選手は見当たらなかったが、それでも一人ひとりの力をつなぎ、優勝に結びつけた。

写真=BBM
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