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川上憲伸、柳裕也、浅尾拓也…本格的に投手挑戦の根尾昂が「目指すべき投手像」は?

 

今季はすでに2試合、一軍マウンドに上がっている根尾


 中日根尾昂が本格的に投手への挑戦をスタートしている。今年は野手も継続するが、来年は投手1本で勝負するという。広いバンテリンドームを本拠地に置く中日は名投手を輩出し、「投手王国」で知られる。柳裕也川上憲伸浅尾拓也……根尾が投手で生き残りに挑む上で、先輩たちの生き様、投球スタイルは参考になる点が多いだろう。
※成績は6月18日現在

空振りの取れるストレート


キレのある直球、変化球を投げ込む柳


・柳裕也
NPB今季成績 11試合登板、5勝4敗、防御率3.23
NPB通算成績 99試合登板、36勝33敗、防御率3.35

 140キロ台の直球、カットボール、縦変化のスライダー、チェンジアップ、カットボール、スライダー、カーブ、シュートと多彩な変化球を操る。決して球が速いわけではないが、駆け引きと洞察力に長けて三振奪取能力が高い。順風満帆なプロ生活ではなかった。明大から即戦力右腕としてドラフト1位で入団したが、1年目は1勝、2年目も2勝のみと期待に応えられなかった。転機は3年目の2019年だ。制球力に磨きをかけてプロで生きる術を見出し、11勝をマーク。昨年は11勝6敗、防御率2.20で最優秀防御率、最多奪三振(168)のタイトルを獲得する。木下拓哉と共に最優秀バッテリー賞、ゴールデン・グラブ賞も受賞した。

 根尾は大阪桐蔭高で投手と遊撃の二刀流で活躍したときから4年のブランクがあるにもかかわらず、投手デビューを飾った今季の登板で自己最速タイの150キロを計測した。球速表示だけを見れば柳より速いが、三振が取れるのは柳の直球だ。多彩な変化球を織り交ぜ、スピンはかかった直球は球速表示以上の速さを感じる。左腕・大野雄大とダブルエースの地位を確立した柳の投球を勉強し、共に練習することで得られるものは多いだろう。

代名詞と呼べるウイニングショット


カットボールを習得して飛躍した川上


・川上憲伸
NPB通算成績 275試合登板、117勝76敗1S1H、防御率3.24
MLB通算成績 50試合登板、8勝22敗1S、防御率4.32

 中日のエースとして活躍した川上は打撃にも定評があった。徳島商高で3年夏に「四番・投手」で甲子園出場。中日時代は通算8本塁打をマークし、メジャーでも打力を買われて代打で起用されたことがある。

 1年目の1998年から先発ローテーションに入り14勝6敗、リーグ2位の防御率2.57をマークして新人王を獲得したが、2年目以降は8勝、2勝、6勝と勝ち星が伸びなかった。川上の野球人生を変えたのは、新球で習得したカットボールだった。2002年は8月1日の巨人戦(東京ドーム)でノーヒットノーランを達成するなど12勝をマーク。04年も17勝をマークして最多勝、沢村賞、MVPを受賞し、チームのリーグ優勝に大きく貢献した。06年も17勝を挙げて2度目の最多勝に輝き、リーグ優勝に導いた。

 フィールディングのうまさにも定評があり、04年に加え06、07年には2年連続ゴールデン・グラブ賞を受賞している。川上のカットボールのように、根尾も代名詞と呼べるウイニングショットを確立することが、先発で成功する上でカギを握るだろう。

独特だった投球フォーム


打者を圧倒するボールを投げ込んだ浅尾


・浅尾拓也
NPB通算成績 416試合登板、38勝21敗23S200H、防御率2.42

「日本一のセットアッパー」として、落合博満政権の黄金時代を支えた。最速157キロの直球、140キロを超える高速フォーク、縦に曲がるスライダーを武器に、全盛期は圧巻の投球を見せた。2010年に25試合連続ホールドの新記録を樹立するなど、72試合登板で12勝3敗1セーブ、当時NPB最多記録の47ホールド、防御率1.68。11年もリーグ最多の79試合に登板し、7勝2敗10セーブ45ホールド、防御率は0.41と驚異の数字をマークする。2年連続最優秀中継ぎ投手に輝き、救援では異例のリーグMVPに選出。高いフィールディング能力も評価され、先発登板が一度もない投手で史上初のゴールデン・グラブ賞を獲得した。

 浅尾の投球フォームは独特だった。テークバックが小さく腕の振りが速い。この投げ方は高2まで捕手だったことが大きく影響していた。矯正しようと思った時期もあったが、この投法が打者を困惑させる大きな武器に。全盛期は相手打者がバットに当てるのさえ困難だった。現在は中日で二軍投手コーチを務める。アマチュア時代に野手としての経験が長く異色の経歴を歩んだキャリアは、根尾が投手としての土台を作り直す上で大きな手助けになるだろう。

写真=BBM
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