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【MLB】防御率8.82の投手がサイ・ヤング賞へ。たった2年で劇的な変化を遂げたコービン・バーンズ

 

投球構成を変え、カットボールを決め球としたことでより勝てる投手へとなったバーンズ。ここにきてさらに安定感のある投球を見せている


 2021年にサイ・ヤング賞に輝いたブリュワーズのコービン・バーンズは全投球の半分以上が平均球速95マイルのカッターという珍しい先発投手である。今季も5月末までで、カッターが55.6パーセント、カーブが19.9パーセント、スライダーが9.8パーセント、シンカーが7.6パーセント、チェンジアップが7.1パーセントだ。高速カッターを両サイド、低めときっちり制球できるから、そこからボールゾーンに外れていく球にも打者はついつい手が出てしまう。

 昨季、ボール球を相手打者が振った確率は37.8パーセントでメジャー1位。今季も38.3パーセントである。メジャー・デビューは2018年で中継ぎ投手。当時は今とは違い、フォーシームが半分以上で、スライダーが30パーセントちょっと、これにカーブとチェンジアップという普通のピッチャーだった。

 19年は開幕から先発ローテ入り。しかしながら4試合で11本塁打を浴びブルペンに配置換えされた。その年の防御率は8.82だった。抑えられない理由は被打率.425のフォーシーム。どうすれば良いかと悩んだ挙句、当時一番の武器だったスライダーに活路を見出すことにした。握りをいろいろと試し、2種類の違うスライダーを開拓。速い方はカッターになった。

 投げ方はフォーシームと同じで、球速を上げていく。20年コロナの短縮シーズンは、96マイルのシンカーと93マイルのカッターを主に投げた。先発の座を勝ち取り、4勝1敗、防御率2.11でサイ・ヤング賞投票で6位に入った。21年は95マイルとさらに速度を増したカッターを半分以上投げ、最初に書いたような投球構成になった。そして打者を圧倒。開幕から初四球を許すまで58奪三振はメジャー記録。

 8月11日カブス戦の10者連続三振はメジャータイ記録。9月11日インディアンス戦は8回まで無安打無失点だったが球数115球で降板。9回はクローザーのジョシュ・ヘイダーが抑え、2人でノーヒットノーランを達成した。19年に防御率8点台だった投手がわずか2年でサイ・ヤング賞を獲得している。

 激変の最大の理由はピッチングの構成を変えたことだが、本人はメンタルについても言及した。「3ボールであっても、0−1,0−2のカウントのように、打者に対して攻めの気持ちを持つ。弱気になったら、その時点でやられる」と言う。

 今季はロックアウトの影響でキャンプが短かったため、高速カッターの制球が定まらないままシーズンに入った。開幕のカブス戦、鈴木誠也に対しても四球、左前打と抑えられず、試合は敗れた。最初の8試合でクォリティスタート6度は悪くはないが、勝ち星はわずか1勝。ブリュワーズのクリス・フック投手コーチは「微妙な感覚のズレで良かったり悪かったりの繰り返しだった」と明かす。それが5月24日のパドレス戦で6試合ぶりに勝ち投手になり、29日のカージナルス戦では7回2安打11奪三振の快投を見せた。

「ゲームプランどおりにきちんと投げられた」と本人も満足していた。ようやく本調子になってきたというが、個人成績は奪三振数、被打率がナ・リーグ1位 防御率は3位。2年連続サイ・ヤング賞獲得に向け、好位置につけている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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