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理想的な打ち方をしているプロ野球選手は?「小学生にはオススメできませんが…」/元巨人・岡崎郁に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代、勝負強いバッティングで球場を沸かせた、元巨人岡崎郁氏だ。

Q.小学生に指導をしています。指導の参考にしたいので、理想的な打ち方をしているプロ野球選手を教えてください。(東京都・匿名希望・30代)


2年連続首位打者のタイトルを獲得しているオリックスの吉田正。シンプルかつコンパクトな打撃フォームが特徴


A.吉田正尚選手は理想的な打ち方をしています

 理想的な打ち方といえば、真っ先に頭に浮かんだのはオリックスの吉田(正尚)選手ですね。無駄のない、動きが小さいフォームで長打力があり、打率も高い。まさに理想的です。ただ、吉田選手のフォームを小学生にオススメできるかと言えば、それはまた違います。

 吉田選手は、無駄な動きを削ぎ落して、小さい動き、小さい反動ながら大きなパワーを生み出しています。これは相当な体の強さがあるからこそ可能であって、まだ体ができていない小学生は真似すべきではありません。小学生は大きくゆったりとしたフォームで反動をつけて打つのが良いと思います。

 反動をつける行為は無駄な動きでもあるのですが、反動がないとボールに大きな力を伝えることができません。高くジャンプするためにしゃがむのと同じで、足を上げたり、体を捻ったり、トップを深くとったりしてボールに力を伝えるわけです。

 吉田選手のバッティングはシンプルですが、これは究極の形です。無駄な動きを削って行き着いたものです。最初からこのフォームだったわけではなく、強じんな肉体と高い技術があるからこそできている。小学生は体も小さく、技術も未熟ですので、いきなり究極の打撃を身につけるのは不可能です。吉田選手のようなフォームを追求するのはもっと先の話。最初は削られるものがたくさんあった状態でスタートして、体ができてきたら、段々と動きを小さくし、無駄を省いていくのが良いのではないでしょうか。

 私も小学生へ打撃を指導する機会がありますが、プロの技術をそのまま教えることはありません。例えば、小学生に大学レベルの授業をしても理解できないですよね。それと同じで、野球の指導にも段階があります。小学生には「思い切り振ろう。スイングスピードを上げよう」という指導をします。「手首の使い方はこうで、ヒジをこの角度で入れて」など細かい技術は中学生、高校生になってから。細かいことを教えているとバットが振れなくなってしまいます。

 打席に立って意識してできることはせいぜい1つか2つです。ポイントを何個も与えてしまうと、考えているうちにボールが来て終わってしまいます。ですので、選手のレベルによって教えればいいと思います。プロの技術を小学生に教えたとしても対応できませんし、野球が面白くなくなってしまいます。

 打撃フォームは人それぞれで、このフォームで打たなければいけないという決まりはありません。打ちやすいフォームを練習で少しずつ見つけていくのが大事です。子どもたちは、まずプロ野球選手のモノマネから始めて一番しっくりくるフォームを少しずつ探していく。そして思い切りスイングする。そこから始めていけばよいと思います。

●岡崎郁(おかざき・かおる)
1961年6月7日生まれ。大分県出身。右投左打。大分商高から80年ドラフト3位で巨人に入団し内野手としてプレー。96年限りで引退。現役生活16年の通算成績は1156試合出場、打率.260、63本塁打、384打点、23盗塁

『週刊ベースボール』2022年6月20日号(6月8日発売)より

写真=BBM
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