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気候の変化から“投高打低”に!? 「湿度」が及ぼす「プレー」「道具」への影響/Daiki’sウォッチ

 

マメが出来やすい投手にとって神経を使う季節


7月1日の楽天戦、マメがつぶれて4回限りで降板した佐々木朗


 4回途中で10奪三振。

 7月1日の楽天戦(ZOZOマリン)、恐ろしいほどの三振奪取率に今日これからロッテ佐々木朗希の三振をどう表現していくか……と、実況席で考えていた矢先、彼のユニフォームに血がついていることに気付いた。

 右手中指のマメがつぶれての出血だった。コントロールを乱しながらも残りの一つのアウトを何とか奪い取り、そのまま降板。あのまま投げていれば結果的にいくつの三振を奪えたのかという思いにふけるイニング間、解説席のロッテOBであり元投手コーチの清水直行さんとこんな話になった。

「湿度の影響は高いよね。マメが出来やすい投手は本当に神経を使う気候になってしまった……」

 観測史上、最も早く梅雨が明けた日本列島。この日のZOZOマリンスタジアムも18時プレーボール時点で気温は30度、湿度は80%を超え、うだるような蒸し暑さの中で迎えたゲームだった。

「連日、湿度が70%を超えてくると、非常に厄介。肌がふやけやすい投手はマメがすぐに破れてしまう。試合中にマメが出来ることもあるし、出来たマメを肌用の乾燥剤で固めてマウンドに上がっても、湿気の影響で試合中につぶれてしまう。あとはマメが出来やすい投手は指のどの位置にマメが出来るかによってもパフォーマンスが全然違う。指の腹の部分なのか、または横側なのか。おそらく佐々木朗の場合は中指の爪の横側の部分じゃないかな。リリース時にぐっと指をかくような感じで投じる際、この部分にマメができ、出血していると抑えがきかない。抜けるボールが多くなる。あとは、投球時に自分の右手親指の爪で中指、人差し指を切ってしまうこともある。湿度で手に水分が多くなり、ふやけやすいと本当に指を傷つけやすくなる」(清水さん)

 異常なほどの高温多湿となっている今季。高校時代から試合中にマメの影響で降板した経験を持つ佐々木朗。一度、登録を抹消する判断となった今回。井口資仁監督が7月以降、優勝へ向けてのキーマンに挙げた佐々木朗が今夏をどう乗り切りるのか。異常な暑さ、湿気、そして初めて経験する登板増、ロングイニング登板。スタミナ面も含め、指へも相当神経を払うことにもなる。

道具に多くの湿気を含んで


 この佐々木朗の完全試合に始まり、今季はソフトバンク東浜巨DeNA今永昇太オリックス山本由伸がノーヒットノーランを達成。毎月のように偉業が達成される日本球界。

 高温で湿度が高いと空気密度が小さくなり、空気抵抗は減る。そのため打球飛距離は伸びる。しかし今季は歴史的に見ても顕著なほど投高打低が続くプロ野球界。

 パ・リーグはペナントレース半分以上が消化しても未だに5球団がチーム防御率2点台を維持。投手の技術向上により、一概には言えないが内的要因だけでなく、外的要因として、ボールやバットといった道具自体に多くの湿気を含み、取材する中で「ボールが飛ばない」という選手、関係者も少なくない。各球団のアナリストたちも打者たちのスイングスピードやスイングパワーが変わらない状況の中で本塁打数や打率、得点力が下がっている部分に関して、「湿度」と「ボール」が関係していると考え、分析を急いでいる。

 NPBが使用する統一球の反発係数は変わっていない。変わったことがあるとしたら気候の変化。ゲームで使用する統一球の保管時にも、高湿度により湿気が含まれている可能性も高いという。

 気温の上昇により、熱中症や脱水症状が危惧される日本。それに加えて湿度の高さによる身体的影響と道具への影響。この時期、注目度が高まる高校野球でも気候の変動により今までになかったことが起きるかもしれない。

文=田中大貴 写真=BBM
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