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日本人メジャーの軌跡

サイ・ヤング賞得票3度のダルビッシュ有。日本人投手では唯一の存在/日本人メジャーの軌跡

 

2012年にダルビッシュ有がレンジャーズ入りした際の契約に、サイ・ヤング賞受賞に対するボーナスがあった。それを聞いた地元のアメリカ人記者が「サイ・ヤング賞ねえ……。ふっ」と、冷笑気味につぶやいていた。「日本では圧倒的な投手だったかもしれないが、メジャーではそうはいくまい、お手並み拝見だな」と言っているような感じを受けたものだ。現在までサイ・ヤング賞を受けた日本人選手はまだいない。だがダルビッシュには受賞してもおかしくない力量がある。

20年は日本人で初の1位票を獲得


カブス時代のダルビッシュ


 記者投票で決まる同賞で、ダルビッシュが得票したのは2012、13、20年の3度。これは野茂英雄の2度を上回り、日本人選手で最多。投票での順位はレンジャーズ在籍時の12年が9位で、13年が2位。カブスにいた20年も2位だった。

 13年はタイガースのマックス・シャーザー(現メッツ)がリーグ最多の21勝を挙げ、WHIPも1位。防御率は2.90で5位だった。ダルビッシュはリーグ最多の277奪三振を記録し、防御率も2.83で4位だったが13勝と勝ち星が伸びなかった。投票ではシャーザーが満票。ダルビッシュは1位票を獲得することはできなかった。

 20年はレッズのトレバー・バウアー(現ドジャース)との一騎打ちだったが、このときは受賞への期待は13年以上に高まった。新型コロナ禍で60試合の短縮シーズン。調整の難しい状況だったものの体調はよく、安定した成績を収めた。シーズン初登板は敗戦投手になったが、2戦目から7試合連続で白星。7試合とも6回以上を投げて失点は1以下と、素晴らしいピッチングだった。

 シーズン最後の登板となった9月25日のホワイトソックス戦では7回、無失点で8勝目(3敗)。日本人選手としてメジャーで初めて最多勝に輝いた。チームの地区優勝にも大きく貢献し、防御率2.01で2位、奪三振93で4位。クオリティースタート10試合もリーグ最多だった。対するバウアーは5勝4敗と勝ち越したのはひとつだけ。ただ防御率1.73でタイトルを獲得し、奪三振100は2位、クオリティースタートも9試合とダルビッシュより1試合少なかっただけだった。

 投票ではバウアーが満票30のうち27票を得た。ダルビッシュは3票。思わぬ大差がついたものの、日本人投手が同賞の投票で1位票を受けたのは初めてだった。受賞を逸したダルビュシュは「2位で悔しい気持ちより、デグロムの上に行けたというのに喜びを感じます」とツイートしていた。33歳から34歳になったシーズンでの活躍。ベテランの域に達してもなお成長している姿を見せた。

『週刊ベースボール』2022年7月4日号(6月22日発売)より

文=樋口浩一 写真=Getty Images
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