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【MLB】契約金102万円からオールスターへ。夢をかなえたアレハンドロ・カーク捕手

 

わずか約100万円で契約した選手がチームの正捕手で人気選手に。もちろん実力も発揮してブルージェイズをけん引している


 スカウトの仕事をしたことはないが、才能ある選手を見つけ出すのは容易ではないのだと思う。オールスターのファン投票中間発表。ア・リーグでスーパースターのアーロン・ジャッジの243万票、マイク・トラウトの213万票につぐ3位につけたのは、ブルージェイズの23歳、アレハンドロ・カーク捕手で185万7670票。

 捕手では2位のヤンキース、ホセ・トレビノの69万5932票に大差を付けていた。2次投票もあるが当確間違いないだろう。2016年にブルージェイズが彼と契約できたのは、たまたまだった。前年、ウラジーミル・ゲレロ・ジュニアの契約に390万ドルも使ってしまったことで、MLB機構からペナルティを受け16年は国際選手の獲得に30万ドルまでしか使えなかった。

 安い選手しか取れない。スカウトたちはアメリカとの国境に近いメキシコのティファナのチームを見に行った。そこでお目当ての選手とは別に背の低いずんぐりした捕手を見つけた。トッププロスペクトの体ではないが、スムーズなスイングでラインドライブを全方向に飛ばす。この選手なら安く買える。金額は3万ドルで、2万2500ドルがティファナの所属チームに行き、本人が受け取った契約金はわずか7500ドル(約102万円)だった。

 打つことについては最初から非凡な才能を見せた。マイナーで打率は3割、OPS(出塁率+長打率)は.900を超えた。そして三振数(69)よりも四球数(94)が多かった。打つ方は20年の21歳の時点でメジャーでやれることが分かった。課題は守備で特にワンバウンドの変化球をブロックするときに体をどう使ったらいいかで迷うことが多かった。

 そこでコーチの勧めで最初から片ヒザをついて構えるようにした。それが彼には合っており、低い姿勢のまま素早く横に動く。レシービングも時にボールを突き刺すような受け方になっていたが、うまくポジションを取って柔らかく受け止められるようになった。

 21年は股関節屈筋のケガで60日間の負傷者リスト入りするなどあったが、今季はダニー・ジャンセンが4月11日に負傷者リスト入りしたことで、レギュラー捕手として連日試合に出るようになった。

 ここまで65試合で237打席に立ち、打率.325出塁率.414長打率.527で10本塁打である。今季メジャーでも三振数(23)より四球数(29)の方が多い。ちなみに三振よりも四球が多く、本塁打を10本以上打っているのはほかにガーディアンズのホセ・ラミレス、ナショナルズのフアン・ソトだけである。ブルージェイズはゲレロ・ジュニアなど若手スター選手が集まるチームだが、その中で173センチ、120キロの小熊のような体をした23歳が攻守でチームをけん引している。

 人気もカナダ、アメリカ、メキシコの3カ国にまたがり185万の得票数に結びついた。トロントでは「KIRK/30(背番号)」のT シャツやユニフォームを着るファンが増えている。「うれしいけど、これからも焦点を絞ってプレーを続けたい。ルーティンをきちんとこなしチームの勝利に貢献したい」と話している。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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