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高校野球リポート

全国で例を見ない「中高一貫の硬式野球指導体制」の東京都市大付。モットーは「文武一道」

 

無念の3回戦敗退


東京都市大付高は東京都市大等々力高との西東京大会3回戦で敗退した


 系列校同士であり、たびたび練習試合をする間柄。3月末に対戦した際には東京都市大付高・山崎雄二監督によると、20対6で東京都市大等々力高に勝利したという。

 約4カ月後の7月18日、西東京大会3回戦で対戦も、東京都市大付高は1対6で敗退した。山崎監督は「完敗です」と言葉を絞り出した。計6失策。東京都市大付高は1回裏に1点を先制も、2回表にディフェンスのミスで3失点と逆転され、主導権を握られてしまった。

「もともと守れるチームではない。打ってリズムを整えていくんですが、先に守りで崩れてしまい、焦りが出てしまった」(山崎監督)

 一番・捕手で主将のけん引役、鈴木寛汰朗(3年)は試合後、大粒の涙を流した。

「(練習試合は)大差で勝っており正直、どこかで『いけるかな』という思いもあったので、より引き締めて試合に入ったんですが……。相手は春から成長したのに対して、自分たちはうまくなれなかった。力負けでした」

 新型コロナウイルスがチームを直撃した。初戦(2回戦、対田無工高)の直前に部員の一部に感染者が確認されため、15人で臨んだ。この日の3回戦もベンチ登録20人に満たない17人と、厳しいチーム状況が続いていた。

「今年の3年生は我慢の3年間でしたので、最後の夏はもう少し、完全な形で挑ませてやりたかった」。山崎監督は無念を口にした。

 東京都市大付高は中高の一貫の男子校である。高校では生徒募集がない、完全な一貫教育校。野球部は「東京都市大学中高一貫硬式野球部」と称され6年間、同じメンバーでプレーする。中学の部活動では「東京都市大学付属ボーイズ」として、硬式野球に触れる。全国でも例を見ない「中高一貫の硬式野球指導体制」で甲子園出場を目指す組織だ。「文武一道」「文100、武100の精神」がモットー。勉学にも力を入れ、難関大学合格を狙う集団である。

新たなステップへ挑戦


 今年の東大の正捕手で主将・松岡泰希(4年)、慶大の主務・服部昂祐(4年、第30回ハーレームベースボールウイーク・侍ジャパン大学代表マネジャー)は同校OB。4回戦に進出した昨夏にバッテリーを組んだ右腕・郷原怜大は明大、捕手・山家和也は慶大に進学した。また、左腕・杉谷鴻紀(2年)が東大に在籍。高校卒業後も大学で野球を継続する流れができており、東京六大学リーグ戦を神宮で見学する。先輩たちの姿を見て、刺激を受けるのは言うまでもない。今夏の主将・鈴木、2年生右腕エース・勝倉拓海も東京六大学でのプレーを夢見ているという。

 主将・鈴木は言う。

「松岡さんは冬場に練習を見てくださり、多くのアドバイスで成長させてもらいました。抜群のキャプテンシーがあり、声の出し方、プレーの一つひとつが勉強でした。この夏は結果で恩返しをしたかったので、残念です。進路についてはこれからですが、大学でも上のレベルを目指していきたいと思います」

 高校野球が終着点ではない。今後は大学入試と全力で向き合いながら、新たなステップへ挑戦する。3年生6人との中高6年間で築いた絆は永遠だ。鈴木は「感謝したいです……」と再び、目に涙があふれた。夏が終わり、ボールからペンに持ち替え、受験準備に入る。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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