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ノーヒットノーランは捕手の力も大きい?/元中日・中尾孝義に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者は現役時代に強肩強打を誇り1982年の中日優勝時にはMVPに輝いた、元中日ほかの中尾孝義氏だ。

Q.今年はノーヒットノーランが何度も達成されています。もちろん、ピッチャーの力が大事だと思いますが、僕はキャッチャーだって頑張っていると思うのですが、いかがでしょう。また佐々木朗希選手は完全試合の次の試合も投げさせるべきだったと思うのですが。(鹿児島県・スマッチ)


中尾氏が捕手を務めノーヒットノーランに迫った中日戦は最後、落合のホームランでまさかにサヨナラ負け


A.キャッチャーにとってもノーヒットノーランは勲章ですが、なかなか達成できるのものではありません。実は私も……

 う〜ん、2つとも難しい質問ですね。最初の質問に対しては、まず、ありがとうございます(笑)。僕はキャッチャー出身だから、どうしてもキャッチャー寄りの答えになりますが、完全試合、ノーヒットノーランはもちろん投手の力は大きいけど、それだけじゃなく、捕手の力もあると思っています。

 配球、選手を乗せていく声掛けなどもそうですが、ああいった大記録達成には運も必要です。ヒットはすべていい当たりじゃない。当たり損ねのヒットもあるし、完全試合なら四球もエラーもダメなわけですしね。そのためにはバッテリーでもピッチャーの投げたい球と、こちらのサインがピタリと合わないと難しい。実際、質問の方が佐々木朗希の完全試合達成の試合を見たとき、佐々木朗は捕手の松川虎生のサインにほとんどクビを振らなかったと思います。そうなると試合のリズムもよくなるんで、バッテリー間だけじゃなく、内野手の守りやすさ、攻撃のリズムにもつながります。

 キャッチャーにとってもノーヒットノーランを受けたというのは勲章ですが、なかなか達成できるのものではありません。西鉄の捕手だった和田博実さんは完全試合2度を含む4度ノーヒットノーランを受けたそうですが、逆にあの大捕手の野村克也さん(南海ほか)は一度もなかったと聞きます。

 で、実は僕もありません(笑)。一度だけ惜しいものはあったんですよ。巨人時代、1989年8月12日の中日戦(ナゴヤ)です。あの年は斎藤雅樹が11連続完投勝利で、20勝をマークした年ですが、あの日も先発して素晴らしいピッチングを見せ、9回の一死までノーヒットノーランで来た。ここで代打の音重鎮だったんですが、初球、音は真っすぐに強かったので、シンカーを外に投げて引っ掛けさせようと思ったら、それが中に入ってきて、ライト前にはじき返された。まあ、ヒット1本だけならいいんですけど、そこから崩れ、最後は落合(博満)さんがサヨナラホームランで試合にも負けてしまいました。あとで聞いたら斎藤は指の血マメが敗れていたらしいですね。確かに9回は球の勢いが落ちてきたけど、それまでいいピッチングをしていたし、それを分かったとしてもベンチも交代は難しかったと思います。

 で、2つめの質問ですが、佐々木朗が完全試合の次の試合でも8回まで完全投球をしながら交代した試合ですね。投手の交代はチーム内でしか分からないことが多く、あの試合でも疲労の度合いなど明かしていないことは多いと思います。特に佐々木朗に関しては、1年目に投げさせず、2年目も無理させずにと長期的なプランでやってきています。あのときも100球程度で交代という決め事にしたがってじゃないですかね。すぐ壊れはしないだろうけど、無理して疲労がたまっていくこともありますから。

●中尾孝義(なかお・たかよし)
1956年2月16日生まれ。兵庫出身。滝川高から専大、プリンスホテルを経て81年ドラフト1位で中日入団。89年に巨人、92年に西武に移籍し、93年現役引退。現役生活13年の通算成績は980試合出場、打率.263、109本塁打、335打点、45盗塁

『週刊ベースボール』2022年7月18日号(7月6日発売)より

写真=BBM
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