Q.バッティングはトップ(スイングの開始位置)が大事と聞きますが、トップの位置、トップを作るまでの動きで重要なポイントを教えてください。(東京都・匿名希望・20代)
三冠王を3度獲得した落合。トップの際のグリップ位置は肩のラインにある
A.グリップは肩のラインより上げないように。トップを作るまでの動きは自由でいいと思います トップの位置ですが、バットのグリップが肩の高さに来るくらいがベストだと思います。肩より高い場合、球との距離が生まれ、遠心力を使って打球を遠くに飛ばすことができますが、その分バットが遅れて出てくるので速い球には間に合わなくなります。レベルが上がると投手のスピードも速くなりますから、デメリットのほうが大きいです。肩のラインにトップをもってくれば、体と一緒に遅れずにバットを回すことができます。それが肩の高さにトップをつくるのをオススメする理由です。
トップの位置を肩より上にする場合のデメリットをもう1つ挙げれば、パワーを発揮しにくいという点もあります。手が肩よりも上に来ると、肩に余計な力が入り、逆に力が抜けてしまいます。強い打球を意識するあまり力んでしまうのは逆効果です。これまでのホームラン打者を見ても、
落合博満さん(元
ロッテほか)も、
清原和博選手(元
西武ほか)もトップの位置は肩より高くなかった。
高橋由伸選手(元
巨人)はどうなの? という声もあるかもしれませんが、由伸はあくまで構えの位置が高いだけです。トップの位置はしっかりと肩の高さに来ていました。
百歩譲って「球を上からたたきたいから」という声があったとしましょう。しかし、ストライクゾーンの最も高い位置は「肩の上部とズボンの上部の中間点」ですから、トップが肩の高さでも十分に球をたたくことができますよね。ですので、球をたたく理由だけでトップの位置を上げる必要はないと思います。
肩よりも高い位置でトップを持ってくるのはアマチュアの選手に多く見られます。なぜ多いのかと言うと、対戦する投手のレベルがまだまだ低く、投手のスピードも速くないので、バットが遅れて出てきても間に合ってしまう。アマチュアのころから肩の高さでトップを作ることができれば、その先の舞台でも大きな苦労がなく、対応できると思います。
次にトップまでにどう持ってくるかですが、「こうしなければいけない」というものはなく、自分に合った方法でいいと思います。プロでも選手によって大きく違います。
オリックスの
吉田正尚選手は動きの少ない打ち方で高打率を記録しますが、バットを大きく上下動させて打つ巨人の
丸佳浩選手も結果を残しています。丸選手は右ヒジと右ヒザを近づけて離す動きからトップを作っていますが、あれはリズムがあったほうがやりやすいからだと思います。ただ、あくまで丸選手にとっての話であり、大事なのは自分が打ちやすいかどうか。たくさん練習をしてきた中で、丸選手はこの打法にたどり着いたわけです。トップの位置は肩の高さを意識しつつ、そこにたどり着くまでの動きは、試行錯誤しながら自分に合った動きをぜひ見つけてみてください。
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岡崎郁(おかざき・かおる)
1961年6月7日生まれ。大分県出身。右投左打。大分商高から80年ドラフト3位で巨人に入団し内野手としてプレー。96年限りで引退。現役生活16年の通算成績は1156試合出場、打率.260、63本塁打、384打点、23盗塁
『週刊ベースボール』2022年7月25日号(7月13日発売)より
写真=BBM