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大学野球リポート

観客が「大谷選手みたい!」プロ相手に投げて、打って、走って、守って「劇場」を繰り広げた日体大・矢澤宏太

 

自己最速に迫る151キロを連発


日体大・矢澤は5番手として救援し、自己最速まで1キロに迫る151キロを連発した


野球伝来150年プロアマ記念試合
【8月1日・神宮】
U-23NPB選抜8-6大学・社会人選抜

 投げて、打って、走って、守って大車輪の活躍。まさしく「矢澤劇場」だった。

 スタンドの観衆は日体大・矢澤宏太(4年・藤嶺藤沢高)のワンプレー、ワンプレーに次第に引き込まれ、最後は虜になっていた。

 一塁側スタンドに設置された報道エリア。そのすぐ後ろでは、プロ野球ファンが熱心に観戦していた。U-23NPB選抜は、将来が有望視される若手注目株で構成(指揮を執ったのは、侍ジャパントップチーム監督を務める栗山英樹監督)。そこで耳に入ってくる会話から、プロ選手の名前はほぼ把握していたのに対して、大学生・社会人選抜の選手はほとんど知らない様子だった。

 矢澤は試合中盤からブルペン近くでアップを開始し、出番を静かに待った。7回裏。5番手でマウンドに上がった。DHを解除して、七番に入った。すると、アドレナリン全開だ。自己最速にあと1キロに迫る151キロを連発。1点を失ったものの、後続2人は得意のスライダーで空振り三振に斬って取った。投球で強弱をつけられるのが、最大の武器である。

8回表に2点適時打。バットコントロールに長けており、どんなコースもミートできる


 8回表。「七番、ピッチャー、矢澤」の場内アナウンスで、大きな拍手が起こる。投打二刀流の真骨頂の発揮だ。一死二、三塁。1ボール2ストライクに追い込まれたが、低めのストレートを見事なバットコントロールで右前へ運んだ。追撃の2点適時打である。

 次打者の右前打で、50メートル走5秒8の俊足で、一気に一塁から三塁へ進塁。矢澤の好走塁でリズムをつかむと、この回(8回表)、さらに3点を追加し、6対8と追い上げた。

 8回裏。矢澤はマウンドへは向かわず、左翼のポジションに入った。スタンドからはこの日、一番の拍手である。一塁内野席のプロ野球ファンも、徐々に矢澤の世界に引き寄せられ「投手をやって、打って、走れる。しかも、外野も守った。大谷選手(翔平、エンゼルス)みたい!」と目を丸くさせた。

 9回裏二死走者なし。矢澤は最後の打者(二ゴロ)となったものの、場内が、固唾をのんで見守っていたのが印象的だ。何かやってくれるのでは、と期待を込めていたのだ。

場内インタビューで軽妙なトーク


 そして、試合後の場内インタビュー。

 矢澤はスタンドの「空気」を読んでか、冒頭にこう話し始めた。軽妙なトーク術である。

「はじめまして。日本体育大学4年の矢澤宏太です。すごく楽しく、野球をすることができました。ありがとうございました!」

 完全に矢澤のオンステージだ。野球伝来150年。今後について問われると、こう言った。

「投手、野手、どちらもやって『矢澤を見たい!』と思われるように、魅力ある選手になっていきたいです」

 帰り際。報道エリアの背後に座る観衆に「(10月20日の)ドラフトが楽しみになってきた。(木曜日で)仕事をどうするか……」とまで言わせた、矢澤の圧倒的な存在感。この日の記念試合で「矢澤宏太」の名前は、多くの野球ファンの心に刻まれた。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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