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【MLB】またも選手たちを怒らせたマンフレッドMLBコミッショナー

 

新労使協定で選手会側としこりを残し、マイナー・リーガー措置でも強硬なマンフレッドコミッショナー。ややコメントに配慮がないときがあり、それが不信感を与えているともいえる


 オールスター・ゲームの日、ロサンゼルスのダウンタウンにあるJWマリオットホテルのボールルームで、午前10時過ぎから選手会のトニー・クラーク専務理事とMLB機構のロブ・マンフレッドコミッショナーが交代で現れ、BBWAA(全米記者協会)の約50人の記者相手に30分から45分ほど会見を開いた。

 約半年前、ロックアウト中に新労使協定締結を巡って激しくやり合った2人。合意し、シーズンが始まっても緊張関係は続く。コミッショナーは労使交渉で選手たちから反感を買ったことを反省し、「関係を改善していきたい」と、個別に選手に会い話すことに努めているが、クラーク理事は「会って話すのは良いが、何を言うかではなく、何をするかが大事だ」と釘を刺す。

 コミッショナーは時に、無神経な言葉を口にしてしまう悪癖がある。この日もそれが出た。年の給料が4800ドル(約66万円)から1万4700ドル(約203万円)の最低レベルのマイナー・リーガーについて、生活に必要なお金すらもらえていないと批判されていることについて「その前提で話を進められても、私はそれを認めない。彼らへの支払いはここ数年、確実に進歩を遂げてきた。住むところも用意するようになった」と反論した。

「オーナーにお金がないのか、払う気がないのか?」と聞かれても、その前提は認めない、の一点張りだった。この発言を会場にいた記者がツイート。あっという間に拡散し「まったく分かっていない」と全米のマイナー・リーガーの批判を浴びている。ちなみにコミッショナーの年俸は1750万ドル(約24億円)である。もちろん立場上、厳しく線を引き、甘いことは言っていられないという事情はあるだろう。

 MLBは元マイナー・リーガーたちに、安い賃金と過剰労働を巡って2万人に集団訴訟を起こされ、1億8500万ドルを支払う羽目になったばかりだ。とはいえ、やはり言葉の選び方が良くない。コミッショナーはオールスターウイークに目玉イベントの一つとして開催されることになったドラフト会議についても、ショーアップされ、ESPNによって全米中継されたことで、「オーナーもこのタイミングが良いと言っている」と満足げに振り返った。

 これに対し、クラーク理事は大学側に迷惑がかかると問題視した。大学は、9月からの新学年に備え、誰が高校から入部してきて、既にいる選手の中から誰がプロに出て行くかなど、早く知りたい。しかしながらドラフトが6月から7月にずれたことで、すべてが1カ月遅れである。選手の入れ替えがとても難しくなった。

 アマとプロは共存共栄、アマ球界のこともきちんと考えるべきという話だ。マンフレッドコミッショナーがやり手なのは確かで、在任期間中に数多くの改革を行ってきた。歴史が彼の功績を評価することになるが、今現在確かなのは、選手にもファンにもあまり人気がないということである。

 ドラフト会議でも、冒頭にステージに出てきて挨拶すると、ロサンゼルスのファンからブーイングを浴びた。慣れっこなのか、表情も変えず、そのまま引っ込んでいる。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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