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2022夏の甲子園

なぜ、近江高は甲子園の人気校となったのか「ミラクル劇」「名物応援歌」【夏の甲子園】

 

昨夏から3季連続出場


近江高[滋賀]と鶴岡東[山形]の2回戦[8月12日]は3万7000人の大観衆となった


 ようやく、夏らしい光景が戻ってきた。夏の甲子園。第7日(8月12日)の第3試合は、今大会最多となる3万7000人を動員した。

 多くの観衆の注目を集めたのは、なぜか。

 近江高(滋賀)が登場したからである。同校の山田陽翔(3年)はエースで四番、主将の大黒柱。昨夏から3季連続出場であり、マンモススタンドのファンもお馴染みだ。

 昨夏は4強、そして今春は準優勝を遂げた。今春のセンバツは、京都国際高のコロナ禍の出場辞退による代替出場。山田は5試合594球の力投も、大阪桐蔭高との決勝で惜敗し、あと一歩、頂点には届かなった。

「日本一」を目標に戻ってきた最後の夏。鳴門高(徳島)との1回戦を逆転勝ち(8対2)、この日の鶴岡東高(山形)との2回戦も逆転勝利(8対3)で3回戦進出を決めた。

 なぜ、近江高は甲子園の人気校となったのか。今夏の2試合に象徴されるようにミラクル劇が多く、観衆の心をグッと惹きつけるからだ。

 今春のセンバツ1回戦(対長崎日大高)では2点を追う9回表に追いつくと、13回タイブレークで勝利。準決勝(対浦和学院高)でも2点ビハインドを追いつくと、延長11回裏にサヨナラ3ランで勝利した。一般観客の入場がなかった昨夏の甲子園でも、劇的な展開の連続。大阪桐蔭高との2回戦では4点差をひっくり返し、神戸国際大付高(兵庫)との準々決勝では9回表に4点リードを追いつかれるも、その裏にサヨナラ勝ち。こうした「近江劇場」に、甲子園のファンが虜になるのも当然の流れだ。

 しかし、厳しい夏もあった。2018年の第100回大会準々決勝(対金足農高)。1点リードで最終回を迎えたが、無死満塁からツーランスクイズを決められ、無念のサヨナラ負け。4万人の大観衆が「金農旋風」に沸いた一方で、近江高ナインは大粒の涙を流している。

 こうした「過去」も熟知しているのが、熱心な甲子園のファンである。3年ぶりの有観客となった今夏、そしてお盆休みとなった8月12日、多くの期待を込めた観衆が甲子園に足を運んだのだ。

自然と流れがくる「魔曲」


 なぜ、応援したくなるのか。ブラスバンドの演奏がオリジナル曲ばかりという要因もある。特にチャンスの場面で流れる『Fire ball(ファイヤーボール)』は、すでに甲子園の名物応援歌の一つに名を連ねたと言っていい。

 今夏は感染予防対策のため、声を出すことはできないが、掛け声もノリが良い。

「今日の主役はどこですか? 近江高校! チャンスをつかむのはどこですか? 近江高校! 勝負に勝つのはどこですか? 近江高校! 優勝するのはどこですか? 近江高校!!」

 心の中で、歌詞を叫んでいるはず。自然と近江高に流れがきてしまう「魔曲」である。8強をかけた3回戦は8月15日の第4試合。近江ブルーがますます、甲子園を熱くする。

写真=田中慎一郎
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