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中日でブレークした20歳の若手成長株に、「来年は首位打者候補」の声が

 

手術を受けない判断


高卒3年目で能力を開花させつつある岡林


 プロの世界でレギュラーをつかみ、一本立ちすることは至難の業だ。

 最下位に低迷する中日は若手の台頭が期待されている。チーム再建に向けて、立浪和義監督も多少のミスには目をつむって辛抱強く起用し続けていた。だが、プロの世界は厳しい。和製大砲・石川昂弥は5月27日のオリックス戦(京セラドーム)で走塁中に負傷交代。7月に左ヒザ前十字靱帯再建術の手術を行ってリハビリに打ち込んでいる。ドラフト2位の新人・鵜飼航丞も51試合出場で打率.206、4本塁打と確実性を欠き、6月27日に登録抹消。7月7日のウエスタン・オリックス戦(ナゴヤ)で自打球を受けて負傷交代し、「左腓腹筋内血腫除去」の手術を受けて戦列復帰を目指している。

 心・技・体とすべての要素がそろわなければ、一軍の舞台では活躍できない。その高い壁を乗り越え、大ブレークの雰囲気を漂わせているのが高卒3年目の岡林勇希だ。

 今年は開幕前に右手薬指と小指を負傷。医者からは手術を勧められたが、岡林は首を縦に振らなかった。5月に週刊ベースボールのインタビューで、「手術をしてしまったら少なくとも前半戦は絶望ということでした。そうなってしまえば、この1年がもったいないなと手術は受けないという判断をしました。今年は勝負の年だと強い気持ちを持ってずっとやってきましたので、何とか工夫をしながら試合に出ることしか考えていませんでした」とその理由を明かしている。

チャンスメーカーとして合格点


 5月終了時点では打率.243。内野ゴロでの凡退が続いた試合もあったが、立浪監督はスタメンから外さなかった。一流と呼ばれる選手は万全でない状態でも結果を残す。岡林もプロの世界で成功するために、通らなければいけない試練だった。試行錯誤を繰り返しながら6月以降は調子を上げていき、7月は月間打率.375、出塁率.423とシュアな打撃と俊足でダイヤモンドを疾走する。8月19日の中日戦(バンテリン)では3点を追う3回一死二塁で右前適時打を放つと、6回も左中間を破る三塁打で同点に追いつく足掛かりに。2安打1打点1盗塁の活躍で規定打席に到達し、立浪監督の53歳の誕生日をサヨナラ勝ちで飾った。

 目下110試合出場し、打率.280で三塁打7本はリーグトップ。14盗塁もチームトップとチャンスメーカーとして十分に合格点をつけられる。

 他球団のスコアラーは「岡林はタイミングの取り方、間合いが天才的です。1年通じて試合に出るのは今年が初めてですが、心身共にタフになっている印象があります。プレースタイルが似ている大島洋平の後継者になるでしょう。来年は首位打者争いに絡んできても不思議ではない」と評価する。

大島からのアドバイス


 岡林は良きお手本である大島に助言を受けたという。

「試合に出る体力というのは、試合に出て身につけていくしかないということは言われました。それでしか身につかないとも。ですから1試合でも多く出て、出続けて、身につけていきたいですね。疲れを感じたとしても、そこでどういう打撃ができるか。自分のやるべきことを明確にして、いろいろとやっていかなければと思います」

 打撃だけでなく、外野の守備でも強肩からの好返球でチームの窮地を幾度も救っている。ゴールデン・グラブ賞を獲得する可能性も十分にある。守って、打って、走って。夢中で駆け抜ける20歳の若武者には無限の可能性が詰まっている。

写真=BBM
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