侍ジャパンU-18代表の吉村は9月2日に追加招集された。貴重な左腕として期待だ
U-18W杯(9月9〜18日、アメリカ・フロリダ)に出場する侍ジャパンU-18代表は9月5日に戦いの地・アメリカへと向かう。
9月2日。東北勢初の全国制覇に貢献した仙台育英高のエース左腕・古川翼(3年)が代表20人から外れた。体調不良により、8月28日のチーム結成時にも合流が見送られ、8月31日、大学日本代表との壮行試合で初めて加わった。ところが、疲労の回復が思わしくないため、2日夜になって明徳義塾高の左腕・
吉村優聖歩(3年)が追加招集されている。
チームを指揮する馬淵史郎監督(明徳義塾高)が高校3年間、指導してきた愛弟子である。
国際試合で通用する投手の3条件を、吉村は兼ね備えている。
左腕、変則フォーム、特殊球。
左の横手投げで、球の出どころが見づらい。最速は135キロだが、数字以上に打者の手元で伸びてくる。変化球はキレのあるスライダーに、スクリュー系のチェンジアップら、タイミングを外すのに効果的だ。
過去の高校日本代表を見ても、2016年は
広島新庄高・
堀瑞輝(現
日本ハム)、17年は秀岳館高・
田浦文丸(現
ソフトバンク)、18年は横浜高・
板川佳矢(現国際武道大4年)、19年は興南高・
宮城大弥(現
オリックス)と、サウスポーの出来が大会の命運を握ると言っていい。
馬淵監督は9月3日、早大との練習試合後に吉村について「試合はつくれます」と語り、「今日は立ち投げ。アメリカへ行ってから調整すればいい」と信頼を寄せる。心身ともタフで、相手チームとしても、独特なフォームは、初見では攻略しづらいタイプと言える。
U-18W杯は球数制限がある。49球以内であれば、翌日の連投が可能で、50〜104球は中1日、105球以上は中4日を空けないといけない。7イニング制の10日間で9試合という過密日程で、馬淵監督は継投を示唆する。49球以内で、毎日でも準備してほしい思いがある。そのリクエストに応えそうなのが吉村。大会のキーマンになる可能性は十分にある。
馬淵監督も他校から預かった選手ではなく、自校の選手であるから、惜しみなく投入できる。「活躍したら、褒めてあげますよ」。指揮官は不敵な笑みを浮かべた。背番号15。吉村にはもう一つの武器がある。ポーカーフェースで、どんな場面も動じることはない。高校日本代表投手陣の救世主になるかもしれない。
文・写真=日本雑誌協会代表取材