週刊ベースボールONLINE

川口和久WEBコラム

投手陣復活で西武黄金時代はよみがえるのか/川口和久WEBコラム

 

大きい森友哉の成長


捕手として投手陣をけん引する森


 ソフトバンク西武オリックスの3チームが僅差でひしめき合うパ・リーグ。特に注目は前年最下位の西武だ。

 2018、19年とリーグ連覇をしているし、順位自体は不思議じゃないが、驚きは投手陣の復活。防御率2.62は堂々のリーグトップだ(9月6日時点)。先発の完投数には物足りなさがあるものの、それもリリーフ陣が質量ともに充実しているからと言える。終盤の競り合いにも強く、戦いが安定している。

 過去何年かの西武は防御率4点台が多く、投手陣は先発がきっちり抑え切れず、走者をためて交代し、それを次の投手がかえしてしまう負の連鎖のようなゲームがよくあった。

 それでも連覇を飾ったのは「山賊打線」の破壊力があってこそだが、打線はどうしても波がある。2ケタ得点の翌日でも好投手に完封されたりすることは珍しくない。勢いはあるが、荒っぽいなと感じることは多かった。

 投手陣にコマがいなかったわけではないが、感じていたのは、「もったいない」ということだ。見ているとピッチングが窮屈。ボール球から入り、コースを狙い過ぎてカウントを悪くし、四球で走者をためたり、最後はストライクを取りにいった甘い球を痛打されることが多かった。

 ただ、これは投手の本能みたいなもので、できもしないのにコースギリギリを狙いたくなる選手は多い。だから俺が巨人の投手コーチ時代もマウンドで「まずはストライクを先行させろ!」「打たれてもいいから勝負にいけ!」と何度となく強く言った。

 もう1つ感じていたのは、強打の捕手は投手への要求が厳しくなりがちということだ。俺がコーチになったときは阿部慎之助だったが、結構、難しい球を要求することがあった。西武の森友哉も同じだ。要求が高く、それに投手がついていっていないように感じることがあった。

 それが今季は違う。ストライクゾーンで勝負するリードに変わり、投手も生き生きとしている。経験に加え、故障や併用もあって、客観的に自分が見られるようになったのかもしれないが、森の成長が今の投手陣の躍進に大きな影響を与えていることは間違いない。

 プラス、豊田清投手コーチの指示も大きいようだ。「無駄な四球を出すな」は彼が徹底していると聞く。それを選手が実践できているのだから信頼も厚いのだろう。

 投手陣の話ばかりになったが、西武は山川穂高、森、外崎修汰源田壮亮ら素晴らしいバッターがそろい、本塁打はリーグ最多と破壊力も健在。投打とも若い選手が多いチームでもある。

 今のバッテリーの意識改革が継続でき、山川以外にホームラン30本台を打てる外国人バッターが加われば、1980年代から90年代前半、ほかのチームから完全に頭1つ抜けていた西武黄金時代の復活もあるかもしれない。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング