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なぜ、吉田輝星は先発で結果を残せないが、リリーフでいい投球をするのか/元ヤクルト・荒木大輔に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者は高校時代に甲子園で名を馳せ、プロ野球でもヤクルトで活躍、さらに西武、ヤクルト、日本ハムでも指導者経験のある荒木大輔氏だ。

Q.今季で4年目を迎えた日本ハムの吉田輝星投手は、リリーフではいいピッチングをしますが、先発では結果を残せません。どういったところに、その理由があるのでしょうか。(秋田県・匿名希望・23歳)


今季も先発では思うようなピッチングができていない吉田輝


A.力を抜く投球が苦手。私は武田久投手をイメージしてリリーフの適性があると思っていました

 まずは吉田輝星投手の今季のピッチングを振り返ってみましょうか。先発では4試合に投げて0勝3敗、防御率7.53。リリーフでは39試合に投げて2勝4ホールド、防御率3.16という成績が残っています(9月9日現在)。先発での平均投球回は3.58。すべての試合で5回を投げ切ることができませんでした。さらに3月27日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では3失点、6月29日の西武戦(ベルーナ)で2失点を喫するなど、先発では立ち上がりに苦戦しているイメージがあります。

 確かに立ち上がりは投手にとって永遠のテーマだと思います。対処法はなかなかありません。私も現役時代、イメージどおりにいくときも、全然ダメなときもありました。ブルペンで良くても、マウンドではボールが暴れるときもありましたし、その逆も。どちらかというと、ブルペンが悪いときのほうが、マウンドでは良かったほうが多かったかもしれません。状態が悪いと実感しているからこそ、丁寧なピッチングを心掛けようという意識が働くのか……。私はボールをうまく操れないときは、開き直ってとにかくストライクゾーンに投げることだけを考えたりもしていましたね。それと、とにかく最初のアウトが欲しいので、先頭に四球を出してしまっても、次の打者が送りバントをしてくれると、すごくホッともしましたね(笑)。

 話を吉田輝投手に戻しますと、彼は私が日本ハムで二軍監督を務めているときに金足農高から入ってきた選手です。いい感じでスタートしても、ひと回りしかもたないような感じでした。決して、スタミナがないというわけではないんです。トレーニングにしても、投げ込みにしても、いろいろなことを継続するタフさは持っています。でも、ゲームの中で投げ抜いていくタフさを感じない。どちらかというと“抜く”ことが苦手なタイプです。すべてが100パーセントの全力になっています。でも、先発は長い回を投げることを考えて、それではダメ。力の強弱をうまくつけて、投げていかなければいけません。

 そういう意味でも短いイニングのほうが吉田輝投手には合っていると思います。私がイメージしていたのは日本ハムで守護神を務めていた武田久投手でした。武田投手は上背がありませんでしたが、浮き上がるような軌道のストレートを投げ込む。吉田輝投手もそんなに身長が高いわけではないですから。だから、当時の栗山英樹監督には「リリーフとして育てたほうがいいのではないでしょうか」と進言していました。

 今年、日本ハムはBIGBOSSが新たにチームを率い、投手、野手ともあらためて選手の能力を見極めているシーズンとなっています。そういった理由から吉田輝投手に先発のチャンスを与えたのでしょう。今後、どのような起用法となるのか注目です。

●荒木大輔(あらき・だいすけ)
1964年5月6日生まれ。東京都出身。早実から83年ドラフト1位でヤクルト入団。96年に横浜に移籍し、同年限りで引退。現役生活14年の通算成績は180試合登板、39勝49敗2セーブ、359奪三振、防御率4.80

『週刊ベースボール』2022年8月29日号(8月17日発売)より

写真=BBM
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