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首都大学リポート

高校の恩師、小倉全由監督の思いを成就させた明治学院大・上野隆成。二部首位打者は初の一部で必死にプレー/首都大学リポート

 

監督の評価は「不思議なバッター」


明治学院大・上野はクリーンアップを任され、チームのためにフルスイングを貫いている


【9月10日】一部リーグ戦
日体大4−0明治学院大
(日体大1勝)

 明治学院大は今春の首都大学二部リーグで優勝。帝京大との入れ替え戦を制し、2008年春以来となる一部復帰を決めた。打の主軸(五番・右翼)としてチームを引っ張っているのが上野隆成(4年・日大三高)だ。

 日大三高時代は3年夏の甲子園に出場し4強進出。折尾愛真高(福岡)との1回戦では先発起用(七番・左翼)され、三塁打と二塁打を含む3安打4打点の活躍を見せた。

 当時は「左キラー」としての起用が多く、出場はこの1試合のみだったが、大会後に小倉全由監督から「左右(の投手)関係なしに使っていたら打っていたな。ごめん」と恩師から評価されたうえに頭を下げられ、その時は「誇らしく感じました」と振り返る。

 明治学院大に進学する際も、小倉監督から「明治学院大は今、二部にいるけれど、お前が行って強くしてほしい」と言われたという。

 明治学院大は金井信聡監督が2020年に就任して以降、練習の質も上がり、チーム力もアップしていった。上野は3年秋に打率.471をマークし首位打者争いを展開(4位)。しかし、ベストナインには選ばれず、悔しい思いをした。そこで、「どうしてもタイトルが獲りたい」と一念発起。「秋のシーズンが終わってから春季リーグが始まるまで、一日中、野球しかしませんでした」と毎朝5時に起きてグラウンドへ行き、18時まで練習。その後、ジムへ行ってトレーニングをし、帰って来てから21時まで素振りとまさに野球漬けの日々を送った。

 成果はすぐに表れ、今春は玉川大との開幕カードで3打数2安打の好スタートを切ると、続く成城大戦では5打数4安打(1本塁打)の大当たり。そして、最終戦を迎えた時点で打率ランキングは3位だったが、東京経済大戦で2打数2安打(1四球1犠打)で逆転。打率.414で念願の首位打者を獲得し、ベストナインも受賞した。

「狙ってタイトルをつかみ取れたので、勝負強くなったと思います」と成長を感じており、フォームでは「トップの位置を変えて、以前は体の前から顔の後ろへ引き上げて打ちにいっていたのを、最初から引き上げた状態で待つようにしました。そのおかげで、相手投手のボールを長く見られるようになっています」と好調の理由を語った。

 金井監督は「体勢を崩されても合わせてくる。その一方でホームランも打てる不思議なバッターで、相手投手からしたら打ち取りづらい打者だと思います」と評価している。

 帝京大との一部二部入れ替え戦1回戦では初回にレフトへ豪快な先制3ランを放った。

「ファーストスイングから狙っていて、3ボール2ストライクになっていたのですが、あの時は理想のスイングができました」。チームを1部へ引き上げるのにも貢献。4年越しで、小倉監督の「明治学院大を強くしてくれ」という思いを成就させている。

「何で埋めるかといったら気持ち」


 上野にとって初めての一部となるこの秋は、開幕週の東海大戦で2連敗。2回戦でレフトへ初安打を記録するも「一部の投手は真っすぐの質が良く、球速以上の伸びを感じます。ストレートが良い分、変化球も活きてくる」と印象を語り、「ヒットも詰まった当たりだったので、まだノーヒットの気分です。ただ、高校時代に小倉監督から『バットの先から根っこまで使って打て』と指導され、とにかくヒットを打つために強く振ることを意識しているので、あの打球もヒットになったのだと思います」と恩師の言葉を今も胸に刻んで打席に立っている。

 第2週は日体大と対戦。「正直、一部には技術で及ばないところがあるので、何で埋めるかといったら気持ち。前向きに、そして、普段からやっている全力疾走やボール拾いなどをやってきました」と、ひるむことなく強豪に挑んだが、0対4で完封負けを喫し開幕3連敗。上野もノーヒットに終わり「一部で勝つことは、こんなに遠いのか」と正直な気持ちを吐露する。それでも「まずは、1勝。順位など、先のことは気にせずに全員で1勝をつかみ取りたい」と気持ちを切り替えている。

 今後の進路については一般企業への内定が決まり、「野球人生の最後なので、後悔のないようにしたい。そして、野球をやったことがない小さな子どもたちが野球を始めるきっかけになるようなプレーをして恩返しがしたい」と上野。この夏の就職活動の影響で調整不足のままリーグ戦に突入したというが、勝負はまだこれから。目の前の試合に必死に食らいつき、感動を呼ぶプレーで白星を狙う。

取材・文=大平明 写真=BBM
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