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東芝153キロ右腕・吉村貢司郎は「1位候補」で一致。「来年の開幕ローテが最低ライン」とスカウト絶賛

 

高いゲームメーク能力


東芝の153キロ右腕・吉村は鷺宮製作所とのオープン戦[9月14日]で6回途中無失点に抑えた[試合は鷺宮製作所が4対3で勝利]


 NPB9球団のスカウトが熱視線を送ったのは、東芝の入社3年目右腕・吉村貢司郎(国学院大)である。

 9月14日、鷺宮製作所とのオープン戦(東芝グラウンド)で先発。5回2/3で、5安打、5奪三振、2四球でまとめ、無失点に抑えた。

「オープン戦が、オープン戦で終わらないように……。変化球の使い方など、テーマを持って投げたつもりです。課題を見つけ、一つひとつ、自分がすべきことを克服していく。現役選手である限り、自分としては、PDCAサイクル(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)を繰り返すだけです」

 大卒社会人選手のドラフト解禁は入社2年目。昨年10月11日に行われたドラフト会議で、吉村は指名漏れに終わった。

「ある程度の悔しさはありましたが、これで行ってもプロで活躍することはできない、と。悔しい半面、まだまだ成長しないといけないと思いました。『見返す』というよりは、自分のやるべきことをやっていこう、と。今年は好不調の波が少なくなったとは思います」

 3月のJABA東京スポニチ大会で優勝の原動力(MVP受賞)となると、都市対抗西関東予選では2年ぶりの本大会出場に貢献。北海道ガスとの1回戦で敗退(0対1)したものの、6回1失点とゲームメーク能力の高さをあらためて示す形となった。

 最速153キロのストレートをコーナーに集める。変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップ、フォーク、カットボール、ツーシームと、どの球種もカウント球、勝負球にできるのが最大の強み。つまり、引き出しが多いため、その日のコンディションによって投球パターンを組み立てることができるのだ。

 今夏の都市対抗を9年ぶりに制したENEOS・大久保秀昭監督は「私見ですが、社会人ナンバーワンは吉村君です」と、同じ西関東で切磋琢磨してきたライバルの実力を認めた。

「どこの球団も評価しているはず」


 昨年のドラフト解禁年は指名を回避したNPB各球団も、今年は「1位候補」で一致。視察した各スカウトからは絶賛の声が相次いだ。

「どこの球団も評価しているはず。(1位で)行くか、行くないか、その判断だと思います」

「上位候補は間違いない。需要がある球団は『即戦力』として、指名したいはずです」

「投球のバリエーションが豊富で、精神的な強さもある。プロ入りすれば、来年の開幕ローテが最低ラインになるでしょう」

「打者との駆け引きがうまい。ピンチの場面で間合いをずらすことができるのも、持ち球に自信があるからでしょう。補強ポイントに合致した球団は、来年の活躍が期待できる」

「ドラフトはゴールではない」


 周囲のフィーバーぶりにも、吉村は冷静だ。

「自分は東芝野球部の一員ですので、常日ごろから応援してくださる社員の方の期待に応えるピッチングをするだけです。もちろん、プロへの思いはありますが、ドラフトはゴール、終着点ではありません。『勝てる投手』になるために、成長し続けていきたいです」

 今年のドラフト会議は10月20日。吉村は個人的な思いは封印し、同30日に開幕する社会人日本選手権に照準を合わせている。

「この赤いユニフォームを着ている以上、負けられない。東芝の社員として、日本一を目指していく」

 2020年の入社以来、東芝・平馬淳監督から求められてきたのは「東芝のエースになれば、プロに行ける!」。この1年間、吉村は主戦としての役割を果たし、試合だけでなく、練習から率先して動いてきた。プロからの「最終評価」を得た上で、3年間、育ててもらった会社、チームのために腕を振るだけだ。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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