佐藤輝明は殻を破れるのか
まさに左バッターの新旧交代か──。
少し前だが、
ヤクルトの
村上宗隆が
巨人・
王貞治さんの55本塁打に並んだ。いま足踏みはしているが、残り試合を考えれば、60本超えも夢じゃない。
左の天才的なホームランバッターということでは、俺の現役時代は
阪神の
ランディ・バース、巨人の
ウォーレン・クロマティがいた。前も書いたことがあるが、村上は広角に打ち、軸がぶれないということではバースに似ていると思う。
村上はもちろん以前からすごいバッターだったが、今年の6月くらいから一気に伸び、隙がなくなった。20代前半の選手と言うのは、そういうタイミングが必ず訪れ、つかむと急成長するが、大部分はそれをつかめずに終わる。
その殻を破るのは、天性だけじゃなく、努力、研究、そしてポジティブなメンタルだと思う。
一方、村上と同じ左打者で、球界を代表する2人のレジェンドが引退を発表した。
1人は中日の福留孝介。1999年に中日に入って、そのあとメジャーに移籍し、日本では阪神でも活躍した。45歳までやって日米通算2450安打。立派な成績だと思う。
俺とは入れ替わりだったので、現役同士の対戦はないが、勝負強く、技術の高い選手だった。右投げ左打ちの
立浪和義監督にあこがれ、同じPL学園高、中日の道を選んだとも聞く。最後、その立浪監督の下でできたのは彼の中でも感慨深いんじゃないかな。
これからどういう道を選ぶのか知らないが、日米で蓄えた技術を後輩に伝え、いつか自分の後継者となる若い左バッターを育て上げてほしいと思う。
もう1人は阪神の
糸井嘉男。この選手の身体能力はすごかった。打っても走っても守ってもすべて抜きん出ていた。
でも、だからこそ、もったいなさも感じる。年齢を重ねてもなお超人もいいけど、パワーが衰えた中で、超人じゃない糸井がどんなバッティングをするのかというのも見たかった気がするからだ。
その糸井が引退会見で、
「もっと練習せい!」
とゲキを飛ばしたのが、同じ近大出身で、これも左打ちの
佐藤輝明だ。ポテンシャルという面では糸井の後継者と言っていいのだろう。
ただ、1年目の佐藤には粗削りだが、ホームランを打つ能力なら糸井を超えるものを感じたが、今年はちょっとこじんまりしている。
まだ23歳だ。守りに入ると自分のブレークポイントが見落とすときもある。練習量もそうだが、もっともっと失敗を恐れず大暴れしてほしい。それで超人・糸井を超える……なんと言えばいいんだろう……。
編集部の締め切りまでに思いつかなかったんで、ちょっと苦しい言葉になるが、佐藤よ、“超超人・サトテル”になれ!
写真=BBM