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【MLB】J.ロドリゲスのユニークな生涯契約に喜ぶ人と首をひねる人

 

マリナーズと生涯契約を結んだ21歳のロドリゲス。労使協定で選手会が勝ち取ったさまざまな内容とは少し違う今回の契約形式。選手会側は苦虫をかみつぶしたような契約となった


 マリナーズと21歳のフリオ・ロドリゲス中堅手が生涯契約で合意、双方が満足している。パドレスの22歳、フェルナンドタティス・ジュニアとの14年3億4000万ドルの契約については、80試合の出場停止処分で暗雲が垂れこめているが、その失敗から学んだと思う。

 ベースは8年1億2000万ドル(2029年まで)だが、契約の中に球団オプションが入っていて、その金額が本人の頑張り次第でエスカレーター式に変動する。最もうまく行けば、19年にマイク・トラウトがエンゼルスと結んだ4億2650万ドルの契約を超える。 

 エスカレーターを動かすのは22年から28年までの7シーズンのア・リーグMVP投票の結果。2度MVPを獲得するか、4度投票で5位以内なら球団オプションは10年3億5000万ドルの延長となり、トータル18年4億7000万ドル(約647億円)とMLB史上最大の契約となる。

 1度のMVP獲得+1度の5位以内、又は3度の5位以内なら8年2億8000万ドルの延長。全部で5段階あり、投票を一度も受けられなければ8年2億ドルである。マリナーズは28年シーズン後にオプションを行使するかどうかの決断をしなければならない。行使しなければ、29年オフにロドリゲスに5年9000万ドルの選手オプションを行使する権利がある。

 ちなみにメジャー最初の7シーズンで2度のMVP獲得は、現役選手ではトラウトとアルバート・プホルスだけ。4度投票で5位以内は2人以外では、アンドルー・マカチェンだけ。大変難しいが、そこまで活躍してくれれば球団も喜んで4億7000万ドルを払う。ロドリゲスもモチベーションを高く保ってプレーできる。活躍してもしなくても金額が変わらないタティス・ジュニアとは違うのである。

 マリナーズのジェリー・ディポト編成本部長は「今までいろんな契約交渉をしてきたが、これはとても楽しかった」と喜んでいる。一方で、昨オフの激しい労使協定交渉で、新たにさまざまな権利を勝ち取った選手会からすれば、残念な契約かもしれない。彼らにとっては、AAV(契約総額を年数で割った数値)の記録を塗り替えて行くことがとても重要。現時点で野手の最高はトラウトの3600万ドルだが、それを調停権や、FA権を得て、さらに額を上げていくのが次のスーパースターの役目だ。しかしながら次世代の看板選手がその前に生涯契約にサインしてしまった。タティスのAAVは2428万ドルだし、ロドリゲスも今回、最大でも2611万ドルである。

 ナショナルズからの15年4億4000万ドルのオファーを蹴った23歳のフアン・ソトが近いうちにトラウトの数字にチャレンジするとは思うが、その次がロドリゲスだったはずだ。

 新協定で調停前の選手のためのボーナスプールという制度もできた。そこできっちりボーナスをゲットし、さらに調停権を得たら、調停交渉1年目、2年目の過去の最高値(1150万ドル、2000万ドル)を更新していって欲しかった。新協定ではぜいたく税の基準額も大幅に上がったし、AAVで5000万ドルを超えることも決して無理ではない。ゆえに選手会としては首をひねってしまうのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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