平成は槙原と松中のみ
現在、三冠王へ向けて突き進んでいる村上
投手にとって一種の頂点となる快挙が完全試合とするなら、打者にとって投手の完全試合と対をなす栄誉は三冠王になるのかもしれない。もちろん完全試合は1試合での壮挙、三冠王は1シーズンの結果からの栄冠だから、まったく趣は異なるのだが、長いプロ野球の歴史において、達成された数は近いものがある。特に平成の時代は、ともに1度ずつ。完全試合は
巨人の
槙原寛己が1994年に、三冠王にはダイエー(現在の
ソフトバンク)の
松中信彦が2004年に輝いている。
完全試合は通算で16度。同じ投手が2度の達成ということはなく、この16度目こそ、この2022年に
ロッテの
佐々木朗希が達成したものだ。三冠王は、やや完全試合より数が少なく、11度。これは同じ選手が達成しているケースがあり、歴代の三冠王は7人だ。これに続こうとしているのが
ヤクルトの
村上宗隆。では、完全試合と三冠王、同じシーズンに達成されたことはあったのだろうか。
初代の三冠王は戦前、春季と秋季の2シーズン制で、各シーズンでタイトルを決めていた1938年の秋、巨人の
中島治康になるが、このときは三冠王ということ自体は注目されなかったという。最初の完全試合は50年、同じく巨人の
藤本英雄が達成したもの。以降、完全試合は続いたが、三冠王は65年に南海(現在のソフトバンク)の
野村克也が輝くのを待つことになる。
完全試合は50年代に5度、60年代も5度あったが、野村の65年にはなし。一方、70年代から80年代は三冠王の黄金時代となる。73年から2年連続で三冠王に輝いたのが巨人の
王貞治。70年代の完全試合は4度だが、王が初めて三冠王となった73年のシーズン終盤に完全試合を達成したのが佐々木と同じロッテの
八木沢荘六だった。
その後は、80年代にロッテの
落合博満が3度、阪急(現在の
オリックス)の
ブーマー・ウェルズ、
阪神の
ランディ・バースが2度、三冠王に輝いたが、80年代の完全試合はゼロ。つまり、完全試合と三冠王が同一シーズンにあらわれたのは73年の1度のみということになる。
さて、2022年。貴重な2度目のシーズンを迎えることになるか。
文=犬企画マンホール 写真=BBM