エースナンバーに昇格して臨んだ大会

　一関学院高の右アンダーハンド・小野涼介(2年)は今夏の甲子園で2試合に先発し、チームの初戦突破に貢献した。自身の代となった今秋、夏の「11」からエースナンバーに昇格し、岩手県大会に臨んだ。

　準々決勝(9月21日)。花巻東高・佐々木洋監督は、今春の県大会2回戦で苦戦した相手だけに「緩急を使ってくる見事な投手。経験からくる自信、マウンドさばきが素晴らしいピッチャー」と警戒していた。試合当日までに、十分な対策を練ってきたが、強調したのは「技術」よりも「精神面」だった。

「(タイミングを)ずらされるので、力で打つのではなくて、意識で対応しろ、と。数字としては、そこまで速くないわけですから、大振りをせずに対応してくれればいい、と」

　教科書のような逆方向、センター返しを放ったのは佐々木監督の息子である主将・佐々木麟太郎(2年)だった。長打狙いではなく、つなぎを優先して3安打と、打線をけん引した。2点リードの花巻東高は8回表に一度は追いつかれるも、その裏に集中打と相手のミスに付け込み一挙4得点、6対2で快勝した。

　試合後、一関学院高・小野は言った。

「(佐々木を)春は抑えていたので、今回も同じような感じでいきましたが、甘くいくことが多く、そのボールを仕留められてしまいました」

　一関学院高はこの日の敗戦で東北大会への進出が消滅し、来春のセンバツ出場は絶望的となった。冬場のテーマとして小野は「体が小さい(166センチ66キロ)ので、体づくりをメーンにしたい。球速も最速が120キロなので、130キロには上げていきたいと思います」と前を向いた。球速アップが実現すれば、緩急自在の投球に、さらに磨きがかかるはず。

　背番号1は課題を胸に、今秋で開催が最後となる岩手県営野球場をあとにした。

文＝岡本朋祐　写真＝井沢雄一郎