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川口和久WEBコラム

下積みか人気か──。2022年を左右した「二軍監督力」/川口和久WEBコラム

 

セパ上位2チームは二軍監督出身



 ファンの期待度、要は集客面も考えてだと思うけど、昔から監督というのは、そのチームの看板選手だった人が多い。野村克也さんのヤクルト時代、星野仙一さんの阪神時代のようにOBじゃない監督もいるが、それぞれ監督としての実績を買われてのことだ。

 監督の道にもいろいろあって、元巨人監督の長嶋茂雄さん、星野さん、最近だと元ソフトバンク監督の工藤公康君みたいにコーチ経験もなく、いきなり監督になるケースがあれば、コーチ経験を積んでから、はい上がるケースもある。

 最近はそれに加え、二軍監督から一軍監督への昇格が一種のトレンドみたいになっている。

 現監督ではヤクルトの高津臣吾監督、DeNA三浦大輔監督、阪神の矢野燿大監督。パではソフトバンクの藤本博史監督、オリックス中嶋聡監督がいる。あとは他球団なら西武辻発彦監督が中日でやっていた。

 一方で、コーチ経験がなく就任が、楽天石井一久監督、ロッテ井口資仁監督、日本ハムのBIGBOSS、中日の立浪和義監督だが、現時点の順位表を見るとセ、パの上位2チームが二軍監督経験者で、最下位がコーチ経験なしの新監督と完全に明暗が分かれていると言っていい。

 もちろん、「中日や日本ハムはもともと戦力的に厳しかったじゃないか」と反論もあるだろうが、あくまで傾向として読んでほしい。

 これまでもコーチ経験の有無や二軍采配経験が監督力に関係はしていたけど、今年、それがいつもより顕著に出ているのは、コロナの影響もあると思う。

 なかなかベストメンバーが組めず、コロナ感染、濃厚接触で頻繁に一、二軍の選手が入れ替わる中、より「やり繰り」と「二軍選手の把握」が要求されたからだ。

 前も書いたことがあるが、選手を使う場合、性格まで知らないとなかなかうまくいかない。特に普段から見ていない二軍選手の場合、単にファームで「勝っているから」「ホームランを打っているから」だけで上げてもうまくはまらないことが多い。日ごろから接している二軍首脳陣のほうが、どう使えば光るかが分かる。

 二軍監督から昇格したばかりの監督は、それが分かっているから一軍の選手が欠けたとき、誰を呼び寄せ、どう使ったらいいのかすぐピンとくるはずだ。

 一番はまったのが新監督の藤本監督だと思う。コロナや故障者でスタメンが流動的だったが、うまくやり繰りをした。

 あとは柳田悠岐デスパイネがいない打線と言っても、去年までの藤本監督なら、それが当たり前だった。その打線でどう点を取っていくかという方法論も頭にあったと思う。

 結果的には、二軍監督経験が大きなアドバンテージになることを証明したシーズンでもあったと言えるだろう。

 コロナもだいぶ衰え、来年、ここまでの入れ替えはないと思うが、監督交代となる阪神は、この方程式で言えば、平田勝男二軍監督が適任な気がするがどうだろう。
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