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プロ野球記録ノート

連覇を果たしたヤクルトは「10年間で優勝3度、最下位5度」の希有な記録【プロ野球記録ノート】

 

大きくものをいった前半戦の貯金


優勝インタビューを受ける高津監督


 ヤクルトが9月25日のDeNA戦に1対0でサヨナラ勝ちし、2年連続9度目のリーグ優勝を果たした。セ・リーグの優勝は巨人の38度(1リーグ時代を含めると47度)に次ぎ、中日広島に並んで2位の記録となる。連覇は1992〜1993年以来29年ぶり2度目。ここ10年間の成績は、最下位→最下位→優勝→5位→最下位→2位→最下位→最下位→優勝→優勝。3度の優勝と5度の最下位と、プロ野球史上希有な成績を残している。

 優勝時の成績は77勝57敗3分けで貯金はちょうど20。7月3日には今季最大貯金28まで伸ばしたが、その後新型コロナの感染などもあり突き抜けることはできなかった。月別の成績は(順位は月別)、

 3、4月 15勝12敗   3位
 5月  16勝 7敗1分 1位
 6月  19勝 4敗   1位
 7月   7勝13敗   5位
 8月  12勝11敗1分 2位
 9月   8勝10敗1分 4位

で、前半戦の貯金が大きくものをいった。

 特に6月は勝率.826と驚異的な成績を上げたが、5月24日から始まった交流戦では、セ・リーグでは初めて全球団に勝ち越し14勝4敗で初優勝(2018年は勝率1位チーム)。また交流戦前の5月13日からの広島3連戦は、初戦は雨で中止になったが1勝1分け。以後7月1日からのDeNA戦も2勝1敗で勝ち越しプロ野球タイ記録となる14カード連続勝ち越しを樹立。その内訳は3勝0敗が4度、2勝1敗が9度、1勝1分けが1度の31勝9敗1分けだった。

 交流戦を除くセ・リーグの勝敗は、

ヤクルト 63勝53敗3分 勝率.543
DeNA 61勝55敗2分 勝率.526
広  島 61勝58敗3分 勝率.513
巨  人 59勝61敗3分 勝率.492
中  日 56勝62敗2分 勝率.475
阪  神 54勝65敗3分 勝率.454

 となり、DeNAとは2ゲーム差、広島とは3.5ゲーム差と肉薄していた。交流戦優勝はヤクルトにとって大きなアドバンテージとなった。

巨人、中日相手に苦戦


 セ・リーグのみの戦いでは貯金は10だったヤクルト。DeNA戦は15勝9敗(残1)、広島戦は14勝8敗1分け(残2)、阪神戦も13勝9敗(残3)と勝ち越したが、巨人戦は11勝13敗1分け、中日戦は10勝14敗1分けと2球団に負け越した。現在最下位の中日は残り5試合でわずかながら最下位脱出の可能性はあるが、優勝チームが最下位チームに負け越したのは1994年の巨人だけだ。

 第2次長嶋政権2年目の巨人は6月を終わった時点で42勝22敗で2位・中日に9.5ゲーム差をつけていた。ところが後半に入ると負けが込み、最終的には「10.8」と言われる最終戦決戦までもつれ優勝が決まった年だ。巨人は最下位・横浜に7月16日まで10勝5敗と大きく勝ち越していた。しかし17日以降は1勝10敗と大きく負け越し、最終的に11勝15敗だった。

 ヤクルトは中日2年目の高橋宏斗に0勝4敗と苦しめられた。3連覇を目指す来季の課題となるだろう。

2年連続2ケタ勝利なしVの可能性


エースの小川も現在8勝にとどまっている


 打率.322、本塁打55、打点132で三冠王目前の村上宗隆を中心にチーム打率はリーグ3位の.251、チーム本塁打はトップの166本、得点596もトップで打撃陣はリーグトップクラスだが、防御率3.56はリーグ5位の成績。

 昨年のチーム最多勝は小川泰弘奥川恭伸の9勝で、2ケタ勝利なしの優勝は2000年のダイエー以来2度目。規定投球回に届いた投手もなしで、これも2019年の西武以来2度目という怪記録で、ともにセ・リーグでは初めてのことだった。今年はエースの小川が規定投球回をやっとクリアしたが、2ケタ勝利にはまだ届いていない。最多はサイスニードの9勝。レギュラーシーズンはもう1度投げるチャンスがありそうで、2年連続2ケタ勝利なし優勝を回避する可能性はある。

 投手分業制が確立したプロ野球。規定投球回到達者ゼロ、2ケタ勝利投手なしでも優勝する時代に突入したかもしれない。

文=永山智浩 写真=BBM
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