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ヤクルトのリーグ連覇に貢献 田口麗斗に「トレードの大成功例」の声が 

 

リリーフとして抜群の安定感


ヤクルト連覇の立役者の一人となった田口


 ヤクルトが球団史上2度目の2年連続リーグ優勝を飾った。令和初の三冠王を獲得できる位置につけ、シーズン最多記録の60本塁打超えを目指す不動の四番・村上宗隆がMVPであることは間違いない。

 だが、村上一人の力で白星を積み上げたわけではない。今季は9月27日時点で2ケタ勝利を挙げた投手が1人もいない。救援陣の活躍が光る中、勝負の分岐点でマウンドに立ち抑え続けた田口麗斗の貢献度は非常に高い。

 今季は44試合登板で1勝1敗2セーブ18ホールド、防御率1.29。開幕から15試合連続無失点で、6月終了時点まで自責点ゼロで防御率0.00と抜群の安定感だった。印象深いのが、5月24日の交流戦開幕戦・日本ハム戦(神宮)の熱投だ。

 1対1の同点で延長10回無死満塁の大ピンチで救援登板すると、四番・清宮幸太郎を外角高めの150キロ直球で空振り三振。続く五番・万波中正はフルカウントからスライダーで遊直に仕留めた。アドレナリン全開で直球は151キロを計測する。六番の宇佐見真吾に3ボールとしたが、直球で押し込んで最後は内角高めに渾身の直球で空振り三振。雄叫びを上げて喜びを露わにした。この快投が、延長11回に村上宗隆のサヨナラ2ランを呼び込んだ。パ・リーグの全球団に勝ち越して交流戦優勝を飾ったが、「田口の20球」がチームを勢いづけたことは間違いない。

巨人では「左腕エース」として期待


巨人時代の田口[写真は20年]


 かつては、巨人の「エース左腕」と期待された男だった。高卒3年目の2016年に10勝をマークすると、翌17年に自己最高の13勝4敗と大きく勝ち越す。だが、18年は2勝8敗と大きく負け越し、救援に配置転換された。19年に救援で55試合登板し、3勝3敗1セーブ14ホールドとリーグ優勝に貢献した。

 そして、21年の開幕前に廣岡大志との電撃トレードでヤクルトへ。先発左腕として期待されたが勝ち星が伸びず、左の救援の層が薄かったチーム事情でシーズン途中に配置転換される。33試合登板で5勝9敗4ホールド、防御率4.02と稼働すると、開幕から救援専任となった今季は防御率が大幅に改善。巨人時代は140キロ台前半だった直球の球速が5キロ以上アップしたことで、ウイニングショットのスライダーも生きている。

「勝利のパフォーマンス」で人気


 ムードメーカーとしてもその存在は欠かせない。今月25日のDeNA戦(神宮)で劇的なサヨナラ勝ちでリーグ連覇を飾った試合後、シーズン中は一塁スタンド前で行っていた「勝利のパフォーマンス」をマウンドで披露。観客に声援を求めると、全身を使ったパフォーマンスで手拍子に合わせて拳を突き上げた。

 スポーツ紙記者は「田口は先発をやりたい気持ちが当然あると思いますが、救援で頑張ってくれた。この経験は先発に戻ったときに必ず役立つと思います。廣岡とトレードが決まった際は賛否両論の声がヤクルトファンから上がりましたが、明るい性格でチームにすぐに溶け込み投手陣再建に一役買っている。『1人4連覇』を達成しましたが、まさに勝利の使者です。ヤクルトから見ればトレードの大成功例と言ってよいでしょう」と称賛する。

 まだ戦いは終わっていない。クライマックスシリーズを勝ち抜き、球団史上初の日本シリーズ連覇へ。幾多の修羅場を潜り抜けてきた左腕は短期決戦でも替えの利かない存在だ。

写真=BBM
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