円陣で飛び出した主将の檄
横浜高は秋季神奈川県大会で優勝。10月22日からの関東大会に出場する
2回戦 10−0小田原(5回
コールド)
3回戦 10−1金沢(7回コールド)
4回戦 10−3武相
準々決勝 22−7三浦学苑(5回コールド)
準決勝 11−1横浜創学館(5回コールド)
横浜高は今秋の神奈川県大会で、準決勝まで一度もリードを許すことなく5試合を勝ち上がった。唯一、武相高との4回戦では、2点リードの2回裏に追いつかれるも、4回表に4点を勝ち越し。やや慌てたシーンは、この一戦だけである。
慶應義塾高との決勝(9月27日)は、初めて劣勢となった。1年夏と今夏、甲子園のマウンドを踏んでいる左腕・
杉山遙希(2年)が、1回裏に4安打を集中され2失点。2回裏も二死二塁から追加点を許した。0対3。
「気持ちが、先走ってしまった」(杉山)
しかし、ここで崩れないのが経験豊富なエースである。3回以降はしっかり修正してきた。
横浜高・村田浩明監督は三塁ベンチでじっと見つめた。
「多くの選手が、初めての決勝戦。想定内。決勝戦の難しさを知れた。我慢強く、やってくれた。それが、収穫です」
1年春から遊撃レギュラーの主将・
緒方漣(2年)は、準決勝まで大勝という試合内容にも、危機感を覚えていた。手応えはなかった。
「経験のある自分と杉山が引っ張っていかないと、勝てない。自覚と責任を持ってきたつもりです」。そして、初めて追う展開となった決勝のイニング間の円陣で言った。
「受け身にならず、挑戦者の気持ちでいこう!! アグレッシブに攻めていこう!!」
3回表に犠飛で1点を返すと、5回表二死三塁から一番・緒方がしぶとく左前へ運び、1点差とした。四球を挟んで、三番・井上葵來(1年)が左翼フェンス直撃の2点二塁打で逆転(4対3)に成功した。
「目の前の一戦一戦に集中し、神宮に行きたい」
グラウンド整備を挟んだ6回以降、杉山は3イニングをパーフェクトに抑え、立て直してきた。横浜高は8回裏に峯大翔(1年)の右越え2ランで貴重な追加点を挙げ、そのまま6対3で逃げ切った。4年ぶり19度目の優勝である。
右袖に「主将」マークをつける緒方は言った。
「ホッとした。なかなかチームがまとまらなかった。この決勝でチームの気持ちが一つになってきた。次の関東大会にもつながる。目の前の一戦一戦に集中し、神宮に行きたい」
10月22日に開幕する関東大会優勝校は「秋日本一」を決める明治神宮大会に出場できる。2020年4月に村田監督が就任して以降、横浜高は昨夏、今夏と甲子園に駒を進めているが、ともに2回戦敗退。全国舞台で上位に進出してこそ、初めて評価される名門校だ。来春のセンバツ甲子園の重要な資料となる関東大会へ、横浜高の士気は確実に上がっている。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎