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指揮官の方針に、それ以上の意識レベルで応える最上級生。明大にスキは見当たらない

 

「快勝なんて、思ったことはない」


明大は6連勝[1引き分けを含む]。法大2回戦[10月2日]は山田[写真右]の2ランなどで9対1と圧倒した[写真左は2安打2打点の主将・村松]


 9対1。明らかな「快勝」である。明大は法大2回戦(10月2日)で連勝し、勝ち点3。開幕の東大1回戦で引き分けて以降、6連勝で単独首位に立った。

 投打に圧倒したわけだが、明大・田中武宏監督は試合後、険しい表情のままだった。

「快勝なんて、思ったことはない。(9回から3番手で救援した)高山(陽成、4年・作新学院高)が試合をつぶしたらどうしよう……。そんな思いでずっと、ベンチで見ていました」

 明大は春のリーグ戦優勝校。春秋連覇へ向け、順調に勝ち星を積み重ねており、明らかに強い。しかし、田中監督は全面否定する。

「逆の結果もある。いつ来るか分からない。自分たちが強いとは、思っていません」

 明大の「強み」とは何か。田中監督は、これだけは胸を張って言える。

「学生たちに言うことは『明日、授業をちゃんと受けなさい』ということ。学校生活、寮生活はふつうの大学に比べたら、厳しくやっている。開幕から連勝しながら『緩み』で負けたこともある。知っているのは私だけ。選手には言い続けています」

 かつて、明大を37年率いた島岡吉郎元監督が提唱した「人間力野球」は昭和、平成、そして令和と引き継がれている明大のシキタリだ。

 野球人である前に、大学生である。日常生活が安定していなければ、グラウンドに立つ資格はない。当たり前のことだが、継続するのは難しい。最近はあまり使われなくなったが「精神野球」こそが、学生として必要なマインド。こうした伝統を積み上げるのは大変だが、崩れるのは一瞬。2020年春、善波達也前監督からバトンを継いだ田中監督は、島岡御大の教えをしっかりと守っている。

「雰囲気をつくるのは4年生」


 今秋に残すは慶大、立大との2カード。法大2回戦で2安打2打点を記録し、打率トップ(.464)に立った主将・村松開人(4年・静岡高)は言う。

「1球の大事さは重々承知している。最後のアウト一つを取るまで分からない。練習から周囲に気を配り、いろいろな場面を想定して準備していきたいと思います。雰囲気をつくるのは4年生。徹底していきたいです」

 また、貴重な2ランを放った副将・山田陸人(4年・桐光学園高)もこう続けた。

「ベンチに入れない4年生から『勝ってほしい』という気持ちが伝わってくる。皆で最後に良い思いをするためにも、4年生が私生活からしっかりやっていきたい」

 指揮官の方針に、それ以上の意識レベルで応える最上級生。明大にスキは見当たらない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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