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首都大学リポート

逆転優勝を狙う東海大にニューヒーロー誕生。強心臓ぶりを発揮した1年生左腕・若山恵斗/首都大学リポート

 

今春デビューも抱いた危機感


東海大の1年生左腕・若山は、リーグ戦初先発となった桜美林大2回戦で8回無失点の好投で勝利投手となった


【10月2日】一部リーグ戦
東海大7−3桜美林大
(1勝1敗)

 首都大学リーグ第5週2日目。リーグ3連覇に向け、もう星を落とせない東海大はリーグ戦初先発となった1年生左腕・若山恵斗(1年・東海大甲府高)の好投もあり、桜美林大2回戦に7対3で快勝。対戦成績を1勝1敗のタイとした。

 勝利のキーマンとなった若山は東海大甲府高出身で、3年春はセンバツ甲子園に出場。1回戦で優勝した東海大相模高(神奈川)と対戦し1対3で惜敗したものの、延長11回を一人で投げ切る奮投を見せた。

 東海大でも今春にリーグ戦デビューを飾ったが「高校時代はスライダーで打ち取れたところが、大学ではしぶとく粘られて簡単に3人で終わらせることができず『レベルが全然、違うな』と感じました」と危機感を抱いていた。そして「リーグ戦を経験し、真っすぐで押していかなければいけないことを学んだので、この夏はストレートを磨いてきました」とタイヤチューブを使ったトレーニングに加え、体幹や握力も鍛えてきた。握力は55キロ。「70〜80キロを目指し、2キロのサンドボールをつかんだり、離したりを500回。お風呂でも湯舟につかりながら手をグー、パーと閉じたり開いたりしています」と強化に励んでいる。

 こうして迎えた秋季リーグ戦の初登板は第4週の筑波大1回戦。同点の9回表、無死満塁の大ピンチという場面での救援となったが、130キロ中盤ながらもキレのあるストレートにカーブとカットボールを織り交ぜたピッチングで、相手の二、三、四番を空振り三振と2つの一塁ゴロに打ち取り無失点に抑えた。

 さらに、延長10回からは無死一、二塁からのタイブレークだったが11回表まではスコアボードにゼロを刻んだ。12回表は守備陣のタイムリーエラーで2点を失ったが、その裏に3点を奪って逆転サヨナラ勝ち。リーグ初勝利を挙げ「4イニングも投げるとは思っていなかったのですが、毎日、黙々とランニングをしてきたので、体力には自信があるんです」と胸を張った。

8回7安打無失点の好投


 オープン戦も含めて初先発となった桜美林大2回戦。2回表の二死満塁をはじめ、複数の走者を背負う場面も多かったが「失点しなければいいので、ヒットを打たれてもまったく気になりません。逆に得点が取れそうで取れないと相手チームもあせってきますから」と1年生らしからぬ強心臓ぶりでピンチを切り抜けていく。

 すると、当初は5イニングの予定だったのが7回まで続投となり、最後は若山が「もう1イニング投げさせてください」と直訴。結局、8回を投げて7安打無失点の好投を見せた。本人は「とにかく勝ことが大事だったのでうれしいのですが、9回を投げ切れずに悔しい思いもあります。自分に実力があれば9回も任せてもらえたはず」と自己採点は辛めの60点。たが、その一方で井尻陽久監督は「若山はここ一番の場面でインコースも突けますし、とにかくコントロールが良い。そして、彼のコントロールは制球だけでなく、心身のコントロールもできるんです」と賛辞を送っている。

 これからも負けられない試合が続くが「チームの力になれるように精いっぱいやっていきたい」と若山。逆転優勝を狙う東海大にとって、ニューヒーローの誕生は心強い限りだ。

取材・文=大平明 写真=BBM
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