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ヤクルト連覇の陰のMVP 「佐々木朗希世代」の大ブレーク内野手に絶賛の声が

 

数字以上に高い貢献度


今季、遊撃のレギュラーを獲得した長岡


 リーグ連覇を飾ったヤクルト村上宗隆が日本選手で最多記録となるシーズン56本塁打を樹立し、さらに2004年の松中信彦(当時ダイエー)以来18年ぶりの三冠王に輝いた。22歳での三冠王獲得は史上最年少の快挙だった。

 村上が2年連続セ・リーグ最優秀選手(MVP)を受賞することは間違いないだろう。では、「陰のMVP」は誰か。ヤクルトを取材する記者は、プロ3年目の長岡秀樹を挙げる。

「救援の清水昇マクガフ田口麗斗木澤尚文も頑張ってくれましたが、長岡の貢献度は非常に大きい。遊撃の守備は球界トップクラスだと思います。強肩で球際にも強い。好守でチームの窮地を再三救ってくれた。ゴールデン・グラブ賞を受賞する可能性が十分にあると思います。打撃も試合を重ねることで徐々に対応できるようになり、勝負強さを発揮しました。まだまだ好不調の波が激しいですが、パンチ力があるし確実性を高めれば、打率3割、20本塁打を達成できると思います」

 リーグ優勝を飾った昨季の一軍出場は5試合のみ。3月31日に一軍昇格したが、1週間も経たずにファーム降格。ファームで半年以上鍛錬を積み、再昇格したのは10月23日だった。リーグ優勝の瞬間に立ち会ったが、遊撃は西浦直亨元山飛優が起用されていた。

 このときは無名の存在だったが、高津臣吾監督に才能を見出されて人生が変わる。今年は春季キャンプを初の一軍で迎え、オープン戦でも結果を残し、「六番・遊撃」で開幕スタメンの座を勝ち取る。7月に新型コロナウイルスの陽性判定で戦線離脱した時期を除き、スタメンを張り続けた。

9月9日の広島戦で決勝2ランを放ちヒーローに[左から塩見泰隆、長岡、久保拓眞]


 三塁・村上、二塁・山田哲人と超一流の選手たちとプレーすることで得るものは多かっただろう。9月9日の広島戦(神宮)で6回に決勝の8号2ランを放った際はベンチに戻った際に村上から頭をはたかれ、「一番年下ですけど、すごいやりやすい環境でやらせてもらってますし……はい、もう少し優しくしてもらいます」とお立ち台で振り返り、スタンドの笑いを誘った。139試合出場で打率.241、9本塁打、48打点。数字以上にチームへの貢献度が高く、申し分ない働きぶりだった。

 今から2年前。ドラフト5位で入団し、同期は1位指名で3球団が競合した奥川恭伸だ。この年は佐々木朗希(ロッテ)、石川昂弥(中日)、宮城大弥(オリックス)、西純矢(阪神)、森敬斗(DeNA)、紅林弘太郎(オリックス)と高校生が大豊作の年だった。

担当スカウトの思い


 同じ遊撃で1位入団の森、2位入団の紅林の注目度が高かったが、長岡も決して負けていない。高校時代から視察していた丸山泰嗣担当スカウトは、今年5月に週刊ベースボールのインタビューでこう語っている。

「八千代松陰高時代は、打撃が良くて、肩も強くて守備も堅実。攻守走そろった選手だなという印象でした。初めて見たのは、私が当時スカウト1年目の18年。彼が高校2年生のときでした。1学年上の清宮虎多朗投手(現楽天育成)の視察で足を運んだのですが、その後ろでショートを守っていました。まだ体の線が細かったのですが、目の前でホームランを放ち、来年も継続して見て行こうと思いました。一冬を越えて春に見たときには、トレーニングの成果もあり、体も大きく、プレーも力強くなっていました」

「そして、長岡は3年夏の千葉大会を迎えたのですが、初戦の相手は、横山陸人投手(現ロッテ)を擁する専大松戸高。注目度もあるなか、長岡は横山投手から先頭打者本塁打を放ちました。『あまり目立たないでほしいなあ』というのが本心でした(笑)。今年は初めて開幕一軍入りを果たし、ショートでスタメン出場を続けています。3年目を迎え、順調に体もできてきていたので、チャンスがあれば一軍の舞台でも活躍するのではないかと思っていました」

 長岡が加速度的に成長する姿を見て、丸山スカウトも喜びが大きいだろう。クライマックスシリーズ、日本シリーズとまだ戦いは続く。短期決戦でも攻守で躍動する。

写真=BBM
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