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U-23W杯

7イニング制のU-23W杯で、なぜ侍ジャパンは「1試合10得点」を目指すのか?

 

得点力アップを優先とする選手選考


侍ジャパンU-23代表は「超攻撃野球」を前面にW杯で「世界一」を目指す。10月9日にはトップチームを率いる栗山英樹監督が激励に訪れた


 第4回WBSC U-23W杯(台湾、10月14日開幕)に出場する日本チームは23人の社会人選手で臨む。石井章夫監督が追求する理想の攻撃スタイルは「打ち勝つ野球」である。

 しかも、7イニング制の今大会で「1試合10得点」を目指すというのだから、驚きだ。

 なぜ、こうしたスタンスを示したのか。

 従来の日本野球からの脱却、がテーマとしてある。侍ジャパンにおけるどのカテゴリーを見ても、日本の「投手力」は世界トップレベルであることは実証済み。

 課題は「攻撃力」であることは、過去の国際大会を見ても明らかだ。2017年2月から社会人日本代表を指揮する石井監督は、アジアのステージでもライバル・韓国、台湾のパワーに屈してきた苦い経験がある。そこで、一念発起した。

「外野に打球を飛ばす長打力を意識して、点を取ることに重きを置いていきたい。外国勢のパワーに、日本も追いつけるように得点を積み重ねていく」。超攻撃野球を掲げたのだ。

 国際試合において「日本の野球」と言えばバントなどの機動力や細かい戦術を駆使する「つなぎ」が、合言葉として定着していた。しかし、それでは世界に通用しないと痛感した石井監督は、抜本的な改革に着手。数年前から強化合宿のたびに代表候補選手の打球速度、飛距離、スイングスピードを計測して「見える化」を実践してきた。多くの選手のデータを収集し、専門家の意見も集約して、得点力アップを優先とする選手選考をしてきた。

 今大会の主将を務めるNTT東日本・中村迅(法大)は言う。

「石井監督からの指示であり、選手も前向きです。2ストライクに追い込まれてからでも、バットに当てにいくのではなく、ボールを見極めて、自分のスイングをする。見逃し三振でもOK、というスタンスです。10点を目指す戦いになる」

 もちろん、フルスイングを貫くだけでなく、塁上では日本伝統の高い走塁技術を駆使して、ダイヤモンドをにぎわせていく。

 これまでの日本チームの国際試合では見られなかった「パワー&スピード野球」への挑戦。「スモール・ベースボール」という、固定観念を覆すことができるか。社会人ジャパンの新たなチャレンジに、注目である。

文=岡本朋祐 写真=藤井勝治
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