週刊ベースボールONLINE

首都大学リポート

4割超の打率を誇る武蔵大のスラッガー・松下豪佑。体力自慢の男にドラフトで吉報は届くか?/首都大学リポート

 

侍ジャパン大学代表の選考合宿で刺激


武蔵大・松下は全日程を終了。4年間、リーグ戦をフルイニングで出場した[2年春はコロナ禍で中止]


【10月16日】一部リーグ戦
筑波大9−5武蔵大
(筑波大2勝)

 首都大学リーグ第7週2日目。武蔵大この週を首位で迎え、優勝争いのトップにいた。だが、筑波大1回戦で4対5の逆転負け、続く2回戦も落とせば一転、3位以下が確定してしまう。明治神宮大会出場をかけた関東選手権への出場枠は上位2チーム。武蔵大は全国舞台への道も閉ざされる窮地に陥っていた。

 そんな逆境のなか、存在感を示していたのが左投げ左打ちのスラッガー・松下豪佑(4年・佼成学園高)だ。

 武蔵大では1年春から活躍し、秋にはベストナイン(外野手部門)を受賞。以降もずっとチームの中軸を任されてきた。今春は1本塁打に加えて12打点(12試合)をたたき出す勝負強さを発揮し、2度目のベストナイン。しかし、松下本人は「シーズン後半からスイングが全然、走っていませんでした。そこで、練習でスイングをしていくなかで、下半身は骨盤を意識し上半身は脱力することでしっくりくるものになりました」とフォーム修正。出来上がった形は、山口亮監督曰く「1、2年の好調時のフォームに近いものになった」という。6月には侍ジャパン大学代表の選考合宿に参加し、刺激を受ける機会に。

「飛距離があるバッターを間近で見て、自分を見つめ直すきっかけになりました。特に林琢真(駒大)は体が小さいのにかなり飛ばしていたので刺激になっています。ただ、選考には残れませんでしたが実力は出せましたし、バッティングや肩などは正直、力の差がそこまであるとも感じませんでした」

 学生ラストとなる秋季リーグでは、開幕から好調をキープ。第2週の東海大2回戦では2本の二塁打を含む4安打で2打点。第3週の明治学院大1回戦でも三塁打と二塁打を放って3安打3打点と固め打ち。「打線全体がよく打っているので、ホームランよりもヒットの延長に長打があると思って打席に立っています」と第6週を終えた時点でリーグの首位打者争いでトップに立っていた。

一つひとつの課題を克服して


 優勝がかかった第7週も筑波大1回戦は2安打。1敗で迎えた2回戦は後がない一戦ではあったが「試合前に同じ副主将を務めてきた斉藤北斗(4年・日大鶴ヶ丘高)が『このチームでやってきたことに悔いはない』と声を掛けていて、自分も同じ気持ちだったので楽しくできました」と、初回からレフト線へ適時二塁打。さらに、第2打席はセンター前、四球を挟み、第4打席は一、二塁間を破るヒットと3安打を放ってみせた。これで打率は.462(39打数18安打)とさらに上昇。

「これまでは1シーズン、ずっと打ち続けることができていなかったのですが、ラストシーズンにようやくできました」

 しかし、チームは序盤のビハインドを跳ね返せずに5対9で敗戦。松下も最終打席は中飛に倒れてゲームセット。昨年の関東選手権でも最後のバッターになっており「もう、なりたくないと思っていたのですが……」と声を詰まらせた。

 この日の黒星で、大学野球の全日程を終えることとなった松下。この1年について「春は投手陣に助けられたので、この秋は自分たちが助けたいと思っていたのですが、できずに悔しいです。でも、この代でやった試合は、負けた試合も含めてすべて思い出になっています」と振り返った。

 松下の野球人生はまだ終わりではない。9月6日にはプロ志望届を提出した。佼成学園高時代は2年秋の東京大会で準優勝。松下は当時から四番・一塁として中軸を担っていたが「高校時代はプロを狙えるような選手じゃなかった」と大学進学。武蔵大では「真っすぐに詰まったり、引っ張れなかったりしたのですが、右にも左にも打てるようになり、隙のないバッティングができるようになりました」と一つひとつ課題を克服した。

 夏の大学代表候補合宿を終えてすぐに、プロ志望届の提出を決意したという。セールスポイントは打撃だけでなく、体力もある。武蔵大では4年間、リーグ戦の全試合フルイニング出場を果たした。「自宅で柔軟体操をしたり、振動する機械を使ってケアをしているくらいで特別なことはしていなのですが、骨折をしたこともありません。1年のころに『最後まで出続けよう』と決めていたので、達成できてよかったです」とコロナ禍によってリーグ戦が中止になった2年春も経験したが、大きな故障もなくプレーできた丈夫さも特筆すべきことだろう。

 運命のドラフト会議まで、あとわずか。

「やることはやりました。あとは待つだけです」と心境を語った松下。武蔵大での4年間で心身ともに成長したスラッガーに吉報は届くか。

取材・文=大平明 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング