週刊ベースボールONLINE

MLB最新事情

【MLB】「ベン・ゾブリスト賞」? ユーティリティ選手の活躍を正しく評価

 

外野のすべて、内野のすべてを守りレイズやカブスで活躍したゾブリスト。ゴールドグラブ級の守備を誇ったが、賞はもらえず。そういう選手に今季から1つ枠ができた[写真はレイズ時代のゾブリスト]


 遅ればせながら、ユーティリティプレーヤーも貢献度を賞の形で報いてもらえるようになった。9月13日、ローリングス社がゴールドグラブ賞を、21日にはルイビル・スラッガーがシルバースラッガー賞を今季から授与すると発表している。

 メッツのバック・ショーウォルター監督は「彼らなしでは試合に勝てない。れっきとした新しいポジションで、オールスターでも選出されるべき。(ユーティリティへのゴールドグラブ賞は)ベン・ゾブリストアワードと呼んでは?」と提案している。

 2009年レイズのベン・ゾブリストは、二塁、右翼を中心に、投手と捕手以外の7つのポジションすべてでスタメン出場。打っては27本塁打91打点17盗塁の大暴れだった。OPS(出塁率+長打率).948はア・リーグ3位で、WAR(そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかの指標)8.6はア・リーグ1位。にもかかわらずMVP投票では8位だった。

 当時はまだWARの重要性が記者の間で理解されていなかった。MVPは首位打者でOPS1位のツインズのジョー・マウアーだった。ゾブリストはその後も活躍を続け3度オールスターに輝いたがゴールドグラブ賞もシルバースラッガー賞も縁がなかった。

 以前は複数のポジションを守るユーティリティプレーヤーは、打撃が苦手で非力のイメージがあったが、近年は打力もものすごい。ドジャースのコディ・ベリンジャーは、OPS.933で新人王の17年は一塁、左翼を主に守った。OPS1.035でMVPの19年は右翼、中堅が多かった。

 そのほかドジャースではエンリケ・ヘルナンデス(現在はレッドソックス)、クリス・テイラーというユーティリティがいた。ドジャースが野手に複数のポジションを守らせるのは、対戦投手に対してマッチアップで最も有利なラインナップを組むためだ。これがうまくいき他球団もマネをしている。

 さてそれでは誰が第1回のゴールドグラブ賞を獲得するのか。ナ・リーグで有力なのはカージナルスのトミー・エドマン。今季は遊撃、二塁を中心に、三塁、右翼、中堅と5つの守備位置に就いた。OAA(OUTS ABOVE AVERAGE/平均の野手よりどれだけ多くアウトを奪ったかの指標)は+19で全体2位だ(9月27日時点)。対抗馬はダイヤモンドバックスのドールトン・バーショで右翼、中堅、捕手でプレー、OAAは全体5位の+16。

 ア・リーグだとロイヤルズのニッキー・ロペスで遊撃、二塁、三塁を守りOAAは全体10位の+13。同じくロイヤルズのカイル・イスベルは外野3つのポジションでOAAは16位の+11である。

 OAAはスタットキャストの科学技術の賜物。打球の初速、守備位置の関係などから、打球をアウトにできる確率が分かるようになった。アウトにできる確率10パーセントの三遊間の難しいゴロをアウトにした場合、+0.90ポイントが得られ、反対にアウトにできなければ-0.10ポイントとなる。こうしてシーズンを通して合計を出していく。エドマンは内訳で見ると、遊撃+10、二塁+8,三塁+1と3つのポジションでプラスになっている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング