ヤクルト五番・オスナは絶好調

今年の日本シリーズで第1戦、第2戦、連続猛打賞のヤクルトの五番・オスナ
昨年と同じ顔合わせになった日本シリーズ。初戦はヤクルトが5対3で勝利したが、ヤクルトの一番・
塩見泰隆は4打数3安打、五番のホセ・オスナも3打数3安打とともに猛打賞。一方、
オリックスの一番・
福田周平は4打数ノーヒット(押し出し四球で1打点)、五番の
杉本裕太郎も4打数ノーヒットと対照的な初戦だった。
ヤクルトの三冠王・
村上宗隆とリーグで出塁率.447とダントツのオリックス・
吉田正尚の両四番打者に注目が集まるが、村上は初戦が四球1、吉田正は四球3。第2戦は村上に四球はなかったものの、吉田正は敬遠2。ともにかなり警戒されながらの勝負となったが、そこで重要なのが五番打者だ。
オスナは初戦に続き第2戦も3安打をマークしたが、村上を歩かせなかったのはオスナの存在が大きい。一方、吉田正は2度も敬遠されたが、ヤクルト陣営が杉本の初戦のバッティングを見ての判断だったのだろう。そんな中、杉本は1打席目に右前安打を放ち、シリーズ初ヒット。3打席目にはボテボテの三塁内野安打を放ち打点も挙げた。まだ本来の長打力は見せてはいないものの、ほっとひと安心といったところだろう。
過去には五番打者の好不調がシリーズの行方を左右することもあった。2000年以降、五番打者(スタメンのみ)が3割をマークしているのは(◎は日本一)、
00年◎
巨人(
清原和博、マルティネス、
江藤智)
19打数6安打 打率.316 本塁打0 打点1
01年◎ヤクルト(
古田敦也)
14打数7安打 打率.500 本塁打1 打点7
04年◎
西武(
和田一浩)
29打数9安打 打率.310 本塁打4 打点6
06年◎
日本ハム(
稲葉篤紀)
17打数6安打 打率.353 本塁打2 打点7
10年◎
ロッテ(
今江敏晃)
27打数12安打 打率.444 本塁打1 打点6
17年
DeNA(
宮崎敏郎)
20打数8安打 打率.400 本塁打1 打点5
18年
広島(
松山竜平)
22打数7安打 打率.318 本塁打0 打点2
19年◎
ソフトバンク(
中村晃、
グラシアル)
15打数5安打 打率.333 本塁打2 打点5
20年◎ソフトバンク(
栗原陵矢)
14打数7安打 打率.500 本塁打1 打点4
の9例。そのうち7チームが日本一になっていて、古田、稲葉、今江、グラシアル、栗原の5人はMVPを獲得している。
パの五番が35打数連続無安打のときも

01年の日本シリーズでは不調に陥った近鉄の五番・礒部
一方、絶不調だった五番打者も存在する。
2001年に12年ぶりに出場した近鉄の五番は
礒部公一でスタートした。ところが第3戦まで12打数ノーヒット。第4戦は
北川博敏に代わるが3打数ノーヒット。1勝3敗で迎えた第5戦は
川口憲史が五番を任されたが、こちらも4打数ノーヒット。チームも1勝4敗でヤクルトに惨敗。結局、近鉄の五番打者は19打数でヒットは1本も打てなかった。
翌2002年の巨人対西武。西武の五番は和田一浩だったが15打数ノーヒットに終わり、チームは屈辱の4連敗。パ・リーグのシリーズ出場チームの五番打者が2年連続(9試合)でノーヒットに終わり話題となった。2003年のダイエーの五番・
城島健司が初戦の2打席目に本塁打を放って不名誉記録はストップしたが、ここまでパ・リーグの五番打者は35打数連続ノーヒットだった。
昨年のオリックスは
T-岡田、ランヘル・
ラベロ、
スティーブン・モヤの3人を起用したが、22打数3安打、打率.136と低迷。日本一になったヤクルトは全試合に
ドミンゴ・サンタナを起用。2本しかヒットを打たなかったが、これがすべて本塁打。それも第3戦は逆転2ラン、第4戦は先制弾と貴重な本塁打を放ち、19打数2安打、打率.105ながら優秀選手賞を獲得している。
今シリーズは今後も四番打者が敬遠されることは考えられる。五番打者の好不調がキーになりそうなシリーズでもある。
文=永山智浩 写真=BBM