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早慶戦で勝ち点挙げて秋連覇を狙う慶大 主将像を見直した下山悠介が牽引

 

慶明戦で春と逆の結果


慶大の主将・下山悠介内野手は慶應義塾高出身。高校3年時はキャプテンとして、春夏連続で甲子園の土を踏んでいる


 慶大は今春の明大3回戦で敗退(7対12)、1勝2敗で勝ち点を落とし、50年ぶりのリーグ3連覇の夢が絶たれた。夏場を経て、今秋の明大3回戦。1勝1敗で勝ち点をかけたこの一戦を落とせば「V逸」という展開だったが、慶大が7対0で快勝した。この時点で勝ち点4とし、単独首位に立ったのである。

 春と秋。同じ状況で迎えた慶明戦で、結果が逆になった。シーズン終盤戦の大一番を制した理由は何か。慶大の主将・下山悠介内野手(4年・慶應義塾高)はリーダーの立場からこう分析している。

「春は一杯いっぱいだった。秋のほうが一戦必勝の意識。シンプルに目の前の相手を倒すこと、目の前の一球に集中できている」

 学生野球は代が替われば、チームカラーは大きく変わる。つまり、最上級生の言動によって、部内の雰囲気は劇的に左右するのだ。

 昨年、慶大は30年ぶりの春秋連覇を遂げた。6月の全日本大学選手権では34年ぶりの日本一を遂げ、11月の明治神宮大会は準優勝。主将として200人近い部員を束ねたのは正捕手・福井章吾(現トヨタ自動車)だった。大阪桐蔭高では3年春のセンバツを制し、夏の甲子園では3回戦進出。当時から「史上最高のキャプテン」と言われ、慶大でも最終学年になると、満場一致で主将に選出された。的確な発言力と発信力。統率力が抜群のキャプテンシーだった。

「福井さんは『ザ・キャプテン』。僕からしたら100点満点。福井さんみたいになりたいと思いました」

「下山らしくやればいい」


 下山は慶應義塾高で主将を務め、3年生だった2018年に春夏連続甲子園出場。慶大でも下級生から出場し、主将就任は既定路線だった。お手本である福井にあこがれ、チーム運営を進めていたが、先述のように今春は優勝を逃した。学生野球は試合に向けた「過程」こそが大事であり、結果がすべてではない。とはいえ、勝負の世界に身を置いている以上、東京六大学で天皇杯(優勝)を目指すのが宿命。ラストシーズンの秋を控え、自らのキャプテン像をもう一度、見つめ直す機会となった。

「意識していないつもりでしたが、ふつうにあったんです。福井さんのマネ。コピーをしていた自分がいるんですが、どこか『違うな』と。6月に堀井(哲也)監督に相談すると『下山には、下山の良いところがある。下山らしくやればいい』と言われたんです」

 偉大な1学年上の先輩の背中を追い求めるあまり、背伸びをしていたという。「動」だった福井に対して、下山は「静」の部類に入る。下山は一つひとつのことをコツコツ、泥臭く、まい進する。そんな真摯な姿が部員の心をつかみ、鼓舞する。チームリーダーのスタイルに、マニュアルはない。人それぞれに個性があり、それが正解なのである。下山は堀井監督からの言葉で、気持ちが吹っ切れた。

「193人の部員全員で喜び合いたい」


 今年の4年生は旧チームからの経験者が多い。この1年をかけて主将・下山を中心に、周囲の4年生がサポートするのが2022年の慶應義塾体育会野球部の「型」として定着した。

 慶應義塾高から通じてKEIOのユニフォームを着るのは、この秋が最後である。

「責任感、使命感がある。慶應に成長させてもらいました。最後の秋、優勝することはもちろん、193人の部員全員で喜び合いたい」

 慶大には「リーグ優勝、早稲田に勝つ、日本一」という三大目標がある。11月5日からの伝統の早慶戦で勝ち点(2勝先勝)を挙げれば昨秋以来、40度目のリーグ優勝が決まる。

 東京六大学のキャプテンナンバーは「10」。もう迷うことはない。周りには仲間がいる。主将・下山は神宮の杜で最後の1球まで、全神経を研ぎ澄まして、陸の王者をけん引する。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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