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首都大学リポート

崖っぷちからの一部残留を決めた明治学院大 主将・儀同祐太郎を中心に揺らがなかった「結束力」/首都大学リポート

 

交通事故にあいながらも


明治学院大の主将・儀同はチームをけん引し、後輩たちに置き土産を残した


【11月14日】一部二部入れ替え戦
明治学院大4−3城西大
(明治学院大が2勝1敗で一部残留)

 首都大学リーグ一部二部入れ替え戦3回戦。明治学院大(一部6位)と城西大(二部優勝)の両校どちらも譲らず、1勝1敗のタイで迎えた運命の最終戦はまたも接戦となったが、4対3で明治学院大が勝利。今春、29季ぶりに復帰していた一部の座を守り切った。

 この大事な一戦を特別な思いでベンチから見守っていたのが明治学院大の主将・儀同祐太郎(4年・横浜創学館高)だ。昨春までは捕手のレギュラー格として活躍していたが、昨年8月、交通事故にあってしまい1カ月の入院。腹部を大きく切開したこともあり「正直、体調はそれまでの50〜60パーセントくらいしか戻りませんでした。今は日常生活に支障はありませんが、スローイングをする時や前後に動くときなどは違和感が残っています」と不自由なプレーを強いられることとなった。

 この事故により、選手としては引退し学生コーチになることも考えたという。だが、金井信聡監督から主将になってほしいと依頼を受け、現役生活を続行することに決めた。

「高校時代もキャプテンをやっていたのですが、最後の夏は神奈川大会の4強で敗れてしまいチームを優勝させることができず、キャプテンとして悔いが残っていました。ですから、大学でも主将を任せてもらえることになり、やるからには『自分の野球人生をかけて、ちゃんとやっていかなくては』と思い直しました」

 ベンチで過ごす時間が増えた。

「チームとしての結果を第一に考え、これまで『自分』だったところを『チーム』に主語を置き換えて1年間やってきました。そして、どこに目標を置いてそのために何をしなければいけないのか。その過程の部分も明確にして、チーム全員を引き上げられるように背中を押してきたつもりです」

 金井監督は「儀同は文句のない、最高のキャプテン。普段の練習から常にチームを引っ張ってくれて、部員たちを一つにしてくれました」と手放しで褒めたたえる。

あきらめない姿勢を体現


 一丸となったチームは今春、二部優勝を遂げ、帝京大との入れ替え戦を制し、29季ぶりの一部昇格を遂げた。チームリーダー・儀同のキャプテンシーが勝因の一つであったことは言うまでもない。今秋は一部の壁にぶつかり、最下位。「1勝10敗という成績で、力の差を感じました」(儀同)。城西大との一部二部入れ替え戦も、先勝される苦しい展開だった。

 あとがなくなった2回戦は逆転で競り勝つ(3対2)と、3回戦も序盤はリードを許したが、6回裏に四番・小澤輝(2年・桐光学園高)と五番・石島功大(2年・桐蔭学園高)のタイムリーで逆転。最後はエース・佐藤幹(4年・駿台甲府高)につないで逃げ切った。

 マウンド付近では歓喜の輪ができ、試合終了後、スタンドへのあいさつを終えると、選手たちは目に涙を浮かべながら互いに抱き合い、健闘をたたえ合った。

 崖っぷちから一部残留を決め、有終の美を飾った儀同は言う。

「入れ替え戦で初戦を落としても、試合で先制されても、逆転で連勝し、チームの粘りを見せることができました。試合は下級生が活躍してくれましたが、今日もベンチにいる4年生が誰よりも声をからしてくれていましたし、そうやって陰ながらチームを支えてくれたことが、土壇場で底力を出せた理由だと思います。チームの団結力があればどんな壁も越えていけると学ばせてもらいました」

 明治学院大は「結束力」がチームのスタイルとして定着しており、最後まで揺らぐことはなかった。来春、一部で戦う後輩たちに向けて、背番号10はこうメッセージを残した。

「この秋は上位を目指すというよりは、残留することが目標になってしまいましたが、来年は一部で勝てるチームになってほしい。そのためには、もっと厳しい練習をしてレベルアップしていくことが必要不可欠になりますが、一人ひとりがチームのために貢献して、勝っていってほしい」

 卒業後は一般企業に就職し、競技者としては今秋で引退する。不慮の事故により、選手としては、不完全燃焼だったかもしれない。だが、野球人生をかけて臨んだラストシーズンを「一部残留」という置き土産を残した。3年生以下には、あきらめない姿勢を自ら体現し、やりきった男の凛々しい姿を見せていた。

取材・文=大平明 写真=BBM
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