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三冠王を獲得した村上宗隆の打撃で優れているのは?「もし巨人に入団していたら…」/元巨人・岡崎郁に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代、勝負強いバッティングで球場を沸かせた、元巨人岡崎郁氏だ。

Q.今季三冠王を獲得した村上宗隆選手。彼の打撃はどの点が優れているのでしょうか。(東京都・匿名希望・30代)


22歳での三冠王獲得は史上最年少。今後どんな記録を残すのだろうか


A.心技体すべてで超一流のものがある。また、加えて運も持ち合わせています

 今季の村上選手の活躍ですが、数字を見てのとおり、ただただ「すごい」としか言いようがないです。心・技・体の3つすべてが超一流だと思います。

 これまでの質問でも答えましたが、打撃で重要なのがトップです。村上選手はトップの高さが、高くもなく低くもない丁度よい位置にあり、また弓矢を射るときのように真っすぐ引くことができている。ムダがまったくないんです。そして、トップから力が緩むことなくインパクトまで一気に振り抜くことができる。その技術は素晴らしいものがあります。

 また、体も超一流です。身長188センチ体重97キロの体格なのに瞬発力、スピードも併せ持つため、大きなパワーが出せています。パワーは「重さ」と「スピード」の掛け算と考えられますが、日本人だと重さがあるとその分スピードが落ちてしまう。ただ、村上選手はあの大きな体を持ちながら、スピードも兼ね備えている。イメージとしてはメジャー・リーガーのような体と表現すればよいでしょうか。

 見ていて分かるようにバットを振り始めてからの速さ、キレは抜群です。心も素晴らしいものを持っていますから、すべてにおいて文句のつけようがない選手だと思います。エンゼルスの大谷翔平選手に匹敵するくらいじゃないでしょうか。

 村上選手が九州学院高時代、私は巨人のスカウト部長をしていましたが、高校生のときから能力はずば抜けていました。熊本の藤崎台球場で見たときもホームランを打っていましたが、高校時代から体格が大きいのに、スピードがあった。出塁すれば盗塁をするし、投げれば肩も強かったですね。

 そして2017年のドラフト会議で外れ1位の3球団競合の末、ヤクルトに入団するわけですが、その3球団の1つが巨人です。当時の巨人は捕手が少なく、捕手として村上選手を指名しました。ただ、結果的に村上選手を外し、その年のドラフトでは大城卓三岸田行倫の捕手2人を指名することになります。

 ご存じのとおり、村上選手はヤクルト入団後に内野手へとコンバートされました。当時こそ「もったいないな」と思いましたが、でも捕手をやらせていたら、今の村上選手の活躍が見られるのはもう少し遅かったかもしれない。守備の負担がより少ない内野手に転向したことが良かったのかなとも思います。ヤクルトの球団カラーだとか、ポジションが空いていただとか、すべての条件がはまって今の村上選手があるのかなと思います。

 もし巨人に入団していたら、現在も捕手としてプレーしていたかもしれません。三塁には岡本和真がいますし、どうなっていたか分かりません。ですので、超一流の心技体、そして運もあっての今季の活躍なのではないでしょうか。すべてがうまく合わさり、あの成績が残せたと言えるでしょう。

●岡崎郁(おかざき・かおる)
1961年6月7日生まれ。大分県出身。右投左打。大分商高から80年ドラフト3位で巨人に入団し内野手としてプレー。96年限りで引退。現役生活16年の通算成績は1156試合出場、打率.260、63本塁打、384打点、23盗塁

『週刊ベースボール』2022年11月7日号(10月26日発売)より

写真=BBM
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