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高校野球リポート

「投球術」「向上心」「リーダーシップ」“世代No.1左腕”大阪桐蔭・前田悠伍の3つの非凡な才能

 

NPBスカウトも高評価


大阪桐蔭高の左腕エース・前田は主将も務める大黒柱だ


 11月28日に開幕した第53回明治神宮野球大会の高校の部には、今秋の全国10地区の地区大会優勝が出場。来春のセンバツ甲子園の前哨戦であり、神宮球場のネット裏には各球団のNPBスカウトが集結した。2022年ドラフトの指名あいさつ、仮契約も落ち着き、23年へ向けた視察の本格スタートの場と言える。

 開幕試合に登場した大阪桐蔭高は東邦高との1回戦を、9対1で快勝した。

 プロ関係者が熱視線を注いだのは、大阪桐蔭高の主将で、左腕エース・前田悠伍(2年)だ。相手打線に8安打を浴びながらも8回1失点と、しっかりとまとめてみせた。球数は116球、1四球とリズムとテンポが抜群であった。

 ある球団幹部は「決して状態は良くなかったと思いますが、悪いなりにも抑える。高校生世代の中では完成度が高い。上位候補? まだ、すべての選手を見ているわけではないので断言はできませんが、中心になるのは間違いないでしょう」と早くも太鼓判を押した。

 前田の良さは何か。3つの非凡な才能がある。

 まずは、投球術だ。

 自己最速は148キロだが、この日の最速は144キロ。相手打線がストレートに的を絞ってくると察知すれば、変化球中心の配球に転換する。「うまく修正して、打たせて取る投球に切り替えられたのは良かった」と、要所でのツーシーム、チェンジアップでタイミングを外した。前田には打席内の動きを見て、配球を組み立てられる器用さがある。また「シングルヒットは嫌がらずに、ゲッツー(併殺)が取れればいいと、プラス思考にしている。それが、連打がなかった要因です」と語った。

 次に、向上心。

前田は同学年においても「世代No.1」と言われる。昨年11月の明治神宮大会では胴上げ投手となり、今春のセンバツ決勝(対近江高)では先発で7回1失点と4年ぶりの優勝に貢献した。夏も甲子園に出場し、準々決勝進出。秋の栃木国体でも快投を続け、頂点に立っている。常に見られる立場。どのチームも「前田攻略」にターゲットを絞ってくる。

「研究されて、打たれているようでは、それまでの投手。対策されても打てないようなボールを突き詰めていきたい」

にじみ出る自信と覚悟


 最後に、リーダーシップ。

 新チームでは西谷監督から「経験値」が期待され、主将に就任した。野球人生初の大役だ。

「責任はあるが、行動に移せていない。キャプテンとしての勉強をしないといけない」

 どんなときも、自身に対して厳しいが、成長を実感したコメントがあった。

「(旧チームまでは)1個上の人に引っ張ってもらう立場でした。今日もミスはあったが、自分がカバーするしかない」

 背番号1。常勝チームとしてのプライドがある。今大会は連覇がかかっているが、頂点まであと3勝。前田は足元をみつめている。

「このチームで『秋日本一』。連覇への意識はありますが、まずは、決勝へ進出するために、目の前に試合に集中する。結果的に優勝へと導けたらいいと思います」

 冷静なマウンドと同様、報道陣からの質問にも淡々と語る前田には、自覚と覚悟がにじみ出ていた。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳
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