“世紀の大トレード”一方の主役

　ロッテは2リーグ制が始まった1950年から参加して、1年目からパ・リーグ制覇、日本一に輝いた毎日が起源。そこから大映と合併して大毎、東京、ロッテとチーム名を変え、ニックネームをオリオンズからマリーンズに、そして現在の千葉へ移転したのは1992年のことだ。

　トレードで騒がれることは決して多くはないチームだが、話題の中心になったこともないわけではない。いや、それらのトレードは、かなり衝撃的だった。

　まずはチームが大毎だった63年のオフ、主砲の山内一弘と阪神の小山正明とのトレード。まだトレードに放出という印象が強かった時代、しかも主砲の移籍は画期的であり、これは“世紀の大トレード”などと騒がれた。翌64年にはチーム名も東京となり、小山は自己最多の30勝を挙げて初の最多勝。山内も四番打者として阪神のリーグ優勝に貢献している。

　のちにロッテの監督となる山内だが、打撃の指導に熱心だったことで知られ、そんな山内に、若手ながら「私には教えていただかなくてもけっこうです」と言い放ったという伝説が残るのが落合博満だ。その後、2年連続を含む3度の三冠王に輝くのだが、その3度目となった86年オフ、「稲尾(稲尾和久監督)さんがいないならロッテにいる意味がない」と発言する。山内のときもさることながら、当時の球界を代表する強打者による事実上のトレード志願に球界は騒然となった。

　前年オフも交渉したという巨人は素早く動いて、正力亨オーナーが「巨人は待っています」と発言。だが、就任したばかりの星野仙一監督が「オチ(落合)を巨人に取られたら10年は優勝できん」と球団に強くはたらきかけたことで、最終的には中日への移籍が決まる。1対4の大型トレードで、中日からロッテへ移籍することになった。

　4人のうちリリーフエースの牛島和彦は当初こそ憤ったが、移籍1年目から初の最優秀救援投手に。89年には12勝と先発でも結果を残した。一方で、中日へ移籍した落合は三冠王からは遠ざかるも、四番打者として88年のリーグ優勝に貢献。これが、落合にとって初めて経験するリーグ優勝だった。

文＝犬企画マンホール　写真＝BBM