筒香の後継者として注目され
今年から導入された現役ドラフトで、出場機会が少なかった選手は環境を変えることで活躍する可能性を秘めている。
阪神から
西武に移籍した
陽川尚将、
ソフトバンクから阪神に移籍した
大竹耕太郎ら即戦力の期待がかかる選手がいる中、潜在能力はNo.1の呼び声が高いのが、DeNAから
中日に移籍した
細川成也だ。
DeNAでは
筒香嘉智の後継者として注目され、当時の
アレックス・ラミレス監督も「
アレックス・カブレラのようだ」とうなった長距離砲。明秀日立高で高校通算63本塁打の実績を引っさげ、鮮烈なデビューを飾る。高卒1年目の2017年。10月3日の中日戦(横浜)に「五番・右翼」でスタメン出場すると、初回のプロ初打席でバックスクリーン直撃の3ランを放つ。翌4日の同戦でも逆方向の右翼スタンドに運ぶ決勝アーチ。デビュー戦から2試合連続アーチは高卒の新人野手で史上初の快挙だった。日本シリーズにも出場して安打を放つ。
内川聖一、
村田修一、筒香を育てた名伯楽で知られるDeNAの
田代富雄コーチは2019年2月に週刊ベースボールのインタビューで、「スイングスピードもズバ抜けているし、迫力を感じる。ボールを飛ばすための体の強さがある。いいスイングするやつって芯を感じるものなんだけど、細川はそれを持っているから」、「
巨人の二軍コーチをやっているときに平塚でバックスクリーンに2本打たれた試合があって、いい打者だなと思っていた。でもテークバックしたときに、もう1回引く動きをしていて、その分投球に遅れている感じがあった。DeNAに来て、まずその点を細川に伝えたかな。今はいい形でボールが待てるようになっていますよ」と素質を高く評価していた。
厚かった一軍定着の壁
前途洋々に見えたが、一軍定着の壁は厚かった。ファームでは2019年に規定打席未満ながら打率.293、チームトップの15本塁打を放ち、2020年は四番に座り、打率.318で最多本塁打(13本)、最多打点(53打点)、最高出塁率(.448)と打撃タイトルを総ナメにして格の違いを見せるが、一軍では低打率で殻を破り切れない。課題は明確だった。直球には強いが、キレのある変化球に対応できないことだ。
DeNAの外野陣は
佐野恵太、
桑原将志、
オースティンとレギュラーが固まっていたため、代打など少ないチャンスを生かさないと生き残れない。
楠本泰史が台頭し、
大田泰示が加入した今年はさらに競争が激化した。イースタンでは62試合出場で打率.275、チームトップの11本塁打を放ったが、一軍では18試合出場で打率.053、1本塁打。同学年の
牧秀悟が中心選手となり、他球団でも同期入団の
山本由伸(
オリックス)が球界を代表するエースに上り詰めた。細川が大化けするためには、環境の変化が必要だったのかもしれない。
中日でも激しい競争
もちろん、中日に移籍しても厳しい競争が待ち受けている。外野の3枠は
大島洋平、
岡林勇希の2枠が確定で、3年ぶりに復帰した
ソイロ・アルモンテ、メジャー通算41本塁打の長距離砲の新外国人、
アリスティデス・アキーノの加入も決まった。
中日を取材するスポーツ紙記者は、「
石川昂弥、
鵜飼航丞、
ブライト健太ら長距離砲として期待が掛かる若手たちがいるが、和製大砲が長年出てきていない。細川はまだ24歳と若い。彼らと切磋琢磨しながら存在をアピールしてほしい」と期待を込める。
眠れる大砲は、ドラゴンズブルーのユニフォームで目覚めるか。
写真=BBM