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リーグ3連覇を狙う明大の新主将・上田希由翔 三冠王を目標に掲げドラフトで「1位指名を目指す」

 

新主将決定まで時間がかかった理由


大学卒業後の「プロ志望」を表明した左から明大・蒔田、主将・上田、村田。2023年春は東京六大学リーグ3連覇がかかる


 朝6時30分から練習を開始し、7時からは約1時間、年末恒例のポール間走。気温10度を下回る厳しい寒さの中であったが、明大の部員たちは汗びっしょり。12月24日、充実の中で2022年の練習を納めた。

 明大は22年、東京六大学を6年ぶりに春秋連覇。11月の明治神宮大会でも6年ぶり7度目の優勝を遂げ、「秋日本一」を達成した。国学院大との決勝(11月24日)から17日後、12月11日に23年の新役員が発表された。

 なぜ、ここまで時間を要したのか。20年から母校を指揮する田中武宏監督は言う。

「(新チーム結成以降は)放っておいたんです。学生コーチだけは決めて、あとの部員はどうするのか? と……。ランニングなどのトレーニングで先頭に立っていたのが上田。最終的には決めました」

 2023年の新主将は、上田希由翔(3年・愛産大三河高)である。3年秋までに打率.301、6本塁打、50打点。今夏には侍ジャパン大学日本代表でプレーし、実績からすれば、文句なしでチームリーダーの器である。しかし、田中監督は即決できなかった。あくまでも最上級生になって以降の動きを最終確認し、自覚と覚悟を見極めた上で決断したのだった。

 それだけ、明大のキャプテンナンバー「10」の責任とは、どっしりと重いのである。田中監督は主将に指名する前に意思確認もした。

「私は3年間、上田に対して、野球のことを言ったことはない。基本的にコーチに任せています。ただし、キャプテンになれば違う。(私からチームのことを)言うよ、と。大丈夫か? と聞けば『はい』ということでした」

 チームのこと、とは技術的なことではない。明大と言えば「人間力野球」。つまり、合宿生活、学校生活におけるあいさつ、掃除など礼節で、求められるハードルは高い。指揮官から言われる前に、チームリーダーとして目を光らせなければいけない。野球以前の話。これができなければ、ユニフォームを着る資格はない。明大の主将とは、相当の責務なのだ。

「最初からできる子はそうはいない。就任以降では公家(響、のち大阪ガス)は就任当初からできていましたが、丸山(丸山和郁、現ヤクルト)、村松(開人、中日2位指名)も多くを発するタイプではありませんでした。時間が経過していくうちに、形成されていく。上田は村松以上に口数が少ないが、恵まれた体(182センチ90キロ)で、言わなくても分かるぐらいの姿勢を全身から醸し出してほしい」

81打点のリーグ記録更新の可能性も


 高校時代に続く主将に、上田に気負いはない。

「いろいろなことに気付いて、発することで、自分自身にもプレッシャーを与え、周りの空気も変えていけるようになればいい」

 副将は3人。捕手の菅原謙伸(3年・花咲徳栄高)、内野手の堀内祐我(3年・愛工大名電高)、投手の村田賢一(3年・春日部共栄高)を据え、上田をサポートする形が整う。また、主務(マネジャー)の森裕規(3年・滝川高)が裏方として、野球部運営の中枢を担う。

 上田は23年シーズンへの意気込みを語る。

「リーグ3連覇、4連覇は明治しか狙える位置にいない。タイトル4冠(春、秋のリーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会)を目指そう、と。全員で意思統一ができている」

 プロ志望の上田はチームを勝利へと導いた上で「打率.350、6本塁打、20打点」での三冠王を目標とする。春、秋で各20打点を挙げれば、早大・岡田彰布(現阪神監督)の持つ81打点のリーグ記録を更新する計算となる。

「知りませんでした(苦笑)。狙える位置であるのならば、超えていきたいと思います」

 ドラフトについては「上位指名。1位指名を目指す」と前を向いた。

12月24日、2022年の練習最終日は恒例のポール間走で締めた


 春5勝、秋3勝をマークした148キロ右腕・村田も「行くからには上位指名」と意気込みを語る。22年は明大のエース番号「11」が空位だったが、春秋連覇を経て、田中監督は来春、復活を示唆。指揮官はその最短距離にいるのは「村田」と認めた上で、本人は「背負いたい気持ちはありますが、自分のレベルアップをテーマにしていきたい」と冷静に語る。

 また、22年春のベストナイン受賞で、12月には大学日本代表候補合宿に参加した通算6勝の150キロ右腕・蒔田稔(4年・九州学院高)もプロ志望を表明した。

「全部、一番を目指したい。イニング、勝利、防御率。柳さん(裕也、現中日)に投球スタイルが似ていると言われるので、人間性も含めて、成長する1年にしていきたいです」

 明大は22年のドラフトまで13年連続(最長)で指名選手を輩出。その背景には「人間力野球」を心底で理解し、安定した日常生活を送る恵まれた環境がある。先輩から後輩へつながれる伝統。23年も最上級生がけん引する盤石の体制である王者に、死角は見当たらない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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