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大学野球リポート

高橋由伸、岡田彰布超えも期待される明大・宗山塁 2年後のドライチ候補の野球哲学とは

 

母校で過ごす充実の年末


明大の2年生・宗山は島岡寮の玄関前でポーズを取る。大学野球は残り2年4シーズンである


 明大は12月24日、2022年最後の練習を行った。早朝から汗を流し、ラストメニューは恒例のポール間走で締めた。部員たちは各々、荷物をまとめて故郷へと帰るが、宗山塁(2年)が真っ先に向かうのは母校・広陵高だ。

「中井先生(哲之監督)の下で3日間、後輩たちと練習をさせてもらい、何か役に立てることがあればありがたいです。後輩と汗を流す中で、自分自身もレベルアップしたい」

 宗山が「野球だけでなく学校生活、寮生活を通じて礼儀、挨拶など、男を磨く場所として学んだ原点」と語る広陵高。3日間、グラウンドに隣接する清風寮で高校生と寝食をともにする。12月の侍ジャパン大学日本代表候補強化合宿にともに参加し、高校の同級生である大商大・渡部聖弥(関西六大学で22年秋、リーグ記録を更新するシーズン5本塁打)も同行。基本に立ち返る意味でも、充実の年末を過ごす。

 宗山は2年生ながら「2022年のドラフト対象ならば、間違いなく1位で指名される」と、複数球団のNPBスカウトから高い評価を受けている、右投げ左打ちの遊撃手だ。

「耳にしたことはありますが、そこまでの自信はありません。ありがたいことですが……。自信をつけるために、練習をしていきたい」

 1年春から出場し、同秋から遊撃のレギュラーとなり、2年秋まで3季連続でベストナインを満票で受賞した。22年春は打率.429(首位打者)、3本塁打、13打点、秋は打率.354、4本塁打、15打点でリーグ連覇に貢献した。積み上げた安打数は2年秋終了時点で61安打(45試合)。リーグ歴代1位は明大・高山俊(現阪神)の131安打で、2年秋終了時は62安打(53試合)。宗山には、リーグ記録の更新が期待される。大学野球4年間8シーズンの折り返し地点を迎えて、宗山は言う。

「この2年間、貴重な体験をさせていただいた分、感じることも多いです。常に過去の自分を上回れるように日々、考えながら、足りない部分に目を向けて、残り2年間を過ごしていきたいと思います」

パワーアップで本塁打増


 注目されるのは、安打記録だけではない。1年時は春秋で計1本塁打だったが、2年時は春3本、秋4本塁打とパワーアップしている。

「ホームランを追い求めていたわけではありません。良い形が、結果的に本塁打になった。取り組んできたことは、間違っていないということが分かりました。この1年間も結果的には良い数字かもしれませんが、春はシーズン終盤に調子を落とし、秋は開幕の入りが悪かった。甘さが出た。思うような率ではない。もっと打てるのではないかと思っています」

 宗山にとって理想の打率とは「今の試合数ですと、5割を目指さないといけない。半分は打つ」と、最低10試合におけるリーグ戦で「1試合2本」を基準としていきたいという。

 ヒットの延長が本塁打の意識で、年間7本塁打(通算8本塁打)。安打数ばかりに目がいきがちだが、残り4季で2年秋を目安にした4本塁打ペースでいけば、歴代1位の慶大・高橋由伸(元巨人)の23本塁打を更新することになる。通算打率トップは早大・岡田彰布(現阪神監督)の持つ.379(宗山は2年秋までに打率.367)、打点も岡田の持つ81打点(宗山は35打点)と、宗山が打撃部門すべてを塗り替えることも想定される。さらには、明大・高田繁(元巨人ほか)の7季連続ベストナインに並ぶ希望もふくらむ。宗山の特長は打撃だけはない。安定した守備力も武器。毎日、全体メニュー後にコツコツと基礎基本を繰り返す、練習の虫だ。

 宗山は一呼吸を置いて言った。

「(記録は)可能性があるとすれば、自分にしかないので、チャレンジしたい気持ちはあります。モチベーションを高めていく上でも、大きな指標にはなる。ただ、それは自分の心の中に秘めていることで、周りから言われることに関しては気にしないです。成長するためには、どうすればいいのか考えていきます」

主将への準備も意識して


 2年生から3年生へ。明大・田中武宏監督は宗山に対して「ここからが勝負。上級生になって自覚、責任が出てくるか」と注文を出す。つまり、下級生までは自身のプレーに集中すれば良かった。チーム全体は4年生、3年生が見てくれるからだ。しかし、“弟”として過ごすのも22年秋が最後。23年春からは“兄”としての言動が求められる。田中監督は宗山について「下級生らしくない。もともと(けん引する力は)ある」と、姿勢を含め、特別な存在であると認める。早くも23年の新主将・上田希由翔(3年・愛産大三河高)の下、次期リーダー候補として、宗山に「準備をしておけ」と指示を出しているという。

 宗山は広陵高時代も主将を経験しており、置かれた立場を十分に理解している。

「今秋までのように、ノビノビとプレーしているだけではダメです。自分のために割いていた時間を、チームに還元しないといけない。4年生になってから取り組むのでは遅い。良い形で最上級生につなげるためにも、早いうちから率先して動いていきたいと思います」

 いつも一歩引いた目線で、自分を見られる。宗山には野球人として、一つのポリシーがある。自身のプレーに関しては、喜怒哀楽を出さない。例えば、本塁打のシーンでも表情一つ変えることなく、淡々とベース1周する。仮にミスを犯しても、下を向かない。いつも一定の精神状態でプレーしているからこそ、コンスタントに数字を残せる。

「どんな場面、どんなに活躍しても喜ばない。大前提として対戦チームへのリスペクトがあります。相手から見ても、不気味か、と。自分では『数ある中での1本』と、とらえています。ただ、チームメートの頑張りついては素直に喜びを表現するようにしています」

 広陵高、明大と名門で培ってきた男の美学。四男(1年)から三男(2年)、そして、23年は次男(3年)となる。長男(4年)へ向けた大事な1年。宗山は年末年始を故郷・広島で英気を養い、学びの地・東京へ戻ってくる。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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