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「努力の男」「不屈の精神力」「探求心」DeNA3位・林琢真が大卒でプロ入りできた3つの理由

 

集合1時間前からバットを振る


駒大・林琢真DeNAからドラフト3位指名で入団。12月29日に出身の東邦高校野球部主催の「祝う会」が行われ、当時の恩師・森田総監督[左]から激励を受けた


 DeNAからドラフト3位指名を受けた駒大・林琢真内野手の「入団を祝う会」が12月29日、名古屋市内のホテルで行われた。

 東邦高校野球部が主催。なぜ、林は大卒でプロ入りすることができたのか。要因は3つある。出席者の挨拶を下に解明していく。

 まずは、努力の男であるということだ。高校3年間、監督として指導した東邦高・森田泰弘総監督は言う。

「先日、東京での結婚式で同席させていただいた中央学院大・菅原悦郎監督が開口一番『林って良い男ですね! 素晴らしい男ですね!』と言われたんです。菅原監督は林が出場した今年夏の大学日本代表(ハーレームベースボールウイーク2022、オランダ)の団長をされていて、毎朝、早起きをして、集合時間の30分前には選手たちのコンディションを見ていたそうです。そこで、林は菅原監督よりも前に集合場所にいて、バットを振っていたそうです。聞けば、1時間前にはいた、と。こんな選手見たことない、と。林はプロに行きたくて、今年がラストチャンスでした。常日ごろから人よりも早く動き、人よりも残って練習。数少ないチャンスを手にしたわけです」

 当時の野球部長で高校時代の担任でもあった東邦高・小嶋裕人副部長も感無量である。

「野球に関しては妥協しない。自分を正しく見つめ、自分に何が足りないのか。一つひとつの課題と向き合い練習し、チャンスをつかんだのが林の力です。根を張る場所は見つかりましたが、張れるかは本人の努力次第。浮き沈みはあるかと思いますが、つらいときこそ、電話、メールで支えてほしいと思います」

 高校在学当時、コーチを務めていた東邦高・山田祐輔監督は言う。

「グラウンドで朝と晩、木下(達生)コーチと2人で取り組んでいた姿がまず、思い浮かびます。練習はウソをつかないことを、再認識しました」

 東邦高校の同窓会組織である東邦会・大河哲男会長は、林が積み上げてきた「努力」を別の視点から見て、激励の言葉を送っている。

「努力しても、報われるとは限らない。ただ、成功する人は必ず努力している。良い先輩、アドバイスを選ぶことも、(プロで)生きる術だと思います」

「間違いなく即戦力」


 次に、不屈の精神力だ。森田総監督は、林の駒大野球部の後輩でもある。

「林は在学中、3回の入れ替え戦を経験している。私もその場に立ったことがありますが、生きた心地がしない。4年秋、ラストシーズンを含めて、一部残留に貢献したわけです」

 そして、努力の根底には、探求心がある。

 東邦高野球部のチームドクターとしてサポートする須田久雄氏(名古屋市立大学大学院医学研究科心臓血管外科学教授)は、この日のパーティーの一本締めを前にして明かした。

「大学進学時に『自分のコンディションを知りたい。体の勉強をしたい。参考になる本を紹介してください』と言ってきたのが、林選手でした。この意識の高さはすごい。プロになると確信しました。プロで活躍することも確信しています。本日は万歳三唱を依頼されましたが、プロで盗塁王、ゴールデン・グラブ賞受賞の際に、皆さんでしたいと思います」

 50メートル走5秒7。強肩二塁手で堅実な守備力に、勝負強い打撃。森田総監督は、林のプレーヤーとしての能力に太鼓判を押す。

「間違いなく即戦力。大卒野手で3位指名。これほどの名誉はありません。林は活躍するでしょう。私たちは、林から刺激をもらう。また、私たちが活躍して、林を刺激する。ここにいる皆さん、飛躍の年にしましょう」

 この日は林が高校時代に白球を追いかけた同学年(2018年卒)に、3年間で関わった先輩と後輩の計5学年と保護者、関係者など約200人が出席。コロナ禍で感染予防対策を徹底した約90分、祝福の声が続いた。年が明ければ本当の勝負が始まる。林の周囲には家族、恩師、仲間、支援者がたくさんいる。幸せな野球選手であるが、この世界を作り上げたのも、1930年創部の東邦高野球部の伝統の力だ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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