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潜在能力はエース級 巨人の「7年目右腕」は覚醒できるか

 

実力の半分も出し切れていない


プロ入りから6年、まだ潜在能力を発揮し切れていない畠


 3年ぶりのV奪回を狙う巨人。投手陣を見ると楽しみな若手が多い。戸郷翔征は昨季自己最多の12勝をマーク。山崎伊織堀田賢慎直江大輔井上温大が光るモノを見せ、赤星優志は先発、救援でフル回転。新人で守護神に抜擢されたドラ1右腕の大勢は、37セーブと見事に応えた。

 だが、若手だけの力では頂点にたどりつかない。意地を見せてほしいのが、生え抜きの中堅投手たちだ。28歳右腕の畠世周は、その筆頭格だろう。入団時に「菅野智之からエースを継承する男」と目されていたが、故障が多くプロ6年間で1度もシーズンを完走できていない。昨オフの契約更改で、は球団から「実力の半分も出し切れていない」と奮起を促されたことを明かした。期待の大きさの表れだ。

 他球団のスコアラーは、「入団してきたときにブルペンでの球を見たらモノが違うと思いました。150キロを超える直球はうなりを上げるような球質で、スライダーもキレ味鋭い。ほれぼれするような本格派右腕で、積んでいるエンジンが違った。2ケタ勝利ではなく、15勝できる能力を持った投手だと感じましたね」と振り返る。

 大谷翔平(エンゼルス)、藤浪晋太郎(アスレチックス)と同世代の1994年生まれ。身長186センチの長身で手足が長いシルエットは両投手と重なる。1年目はドラフト後に右肘の遊離軟骨除去手術を行った影響で春季キャンプ三軍スタートだったが、7月に一軍デビューを飾り、13試合登板で6勝4敗、防御率2.99。実働3カ月でこの成績は十分に合格点をつけられる。

 覚醒は近いと思われたが、その後は度重なる故障で輝きが失われた。2018年は腰痛で出遅れて9試合登板、19年も右肘の遊離軟骨除去手術を受けて5試合登板のみに終わる。20年も春季キャンプ中に右肩の肉離れを発症して4カ月間離脱した。先発から救援に配置転換された21年は、自己最多の52試合登板して4勝3敗1セーブ11ホールド、防御率3.07。ロングリリーフ、セットアッパー、ストッパーとチーム事情に合わせてフル回転した。自分の居場所をつかんだかに思われたが、昨年は自慢の直球が春先から走らない。コンディションが万全でないのか5月30日に登録抹消されると、3カ月以上のファーム調整に。27試合登板と前年から大きく減らした。

 持っている能力は申し分ないが、プロの世界は心・技、体すべてそろっていないと活躍できない世界だ。入団以来、故障で満足に投げられない時期が続いている畠がシーズンを完走する難しさを、一番痛感しているだろう。

オリックスの右腕をお手本に


 だが、まだ老け込む年ではない。28歳でプロ入りしたオリックス阿部翔太は良きお手本ではないだろうか。新人の21年は4試合登板だったが、プロ2年目の昨季44試合登板で1勝0敗3セーブ22ホールド、防御率0.61と抜群の安定感で大ブレーク。シーズン終盤は守護神に抜擢され、チームのリーグ連覇、26年ぶりの日本一に大きく貢献した。

 阿部は週刊ベースボールのインタビューで、こう語っている。

「(昨年は)届く距離にいる皆の中に入っていけなかったからこそ、何もしていない自分がふがいないなと思ったんです。だから『今年こそ』って。昨年は何もできず悔しい1年だったので『絶対に活躍する』という思いでやってきたし、優勝した今も、その思いは変わらない。その気持ちが今年の原動力です」

「プロは143試合ある。昨年は故障してしまったこともあって、それが社会人と一番違う大きなポイントだとあらためて思いました。だから、体をもう一回、しっかり鍛え直さないと戦えないなって。体のサイズアップではなくて、筋(肉)量を増やし、143試合を戦う中で持久力、耐久性も必要になる。本当に今までにないくらいトレーニングをしました。オフだけでなくて、シーズン中も継続して。途中でやめてしまうと、筋量も落ちてしまうし、持久力もつかないので。あとは、フォークとか変化球のコントロールには自信があったんですけど、ストレートの勢いがないと、変化球の精度も生きないなと思っていました」

 オリックスに象徴されるように、若手、中堅、ベテランががっちりかみ合っているチームは強い。畠は今年でプロ7年目を迎える。心身ともにタフになった姿で巨人に不可欠なピースになれるか。

写真=BBM
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