「俺たちは勝つ、勝つ、勝つ!」
水原茂(円裕)、
川上哲治、
長嶋茂雄に
原辰徳。通算して10年を超える長い期間、巨人を率いた監督たちだ。長嶋監督は2期、原監督は現在の3期と分かれているが、長期政権は巨人の特徴だろう。これに初代で1期7年の藤本定義監督、2期7年の
藤田元司監督が続く。いずれも名将と呼べる監督たちだ。
言葉で最強のインパクトを残すのは、やはり長嶋監督だろう。“長嶋語録”ともいわれる独特の言葉については、別に1冊の本ができてしまいそうなので、バッサリ割愛する。ただ、なにかとツッコミが入り、それを含めたおもしろさが長嶋監督の言葉だろう。1996年に首位の
広島から11.5ゲーム差と離されていた巨人で、長嶋監督は「メークドラマ」と表現。「文法が間違っている」という重箱の隅(ド真ん中?)をつつくようなツッコミを歯牙にもかけず(一応、長嶋監督は「分かりやすさを重視した」という趣旨のコメントを残している)、巨人は逆転リーグ優勝を飾っている。ある意味、「メークドラマ」はナインへの檄でもあったのだろう。
あまり大きな声で選手に檄を飛ばすタイプではなかった長嶋監督だが、貴重な例外が94年。
中日と、プロ野球で初めて同じ勝率で首位に並んで最終戦を迎えた10月8日、その“10.8決戦”を前にミーティングでナインに「俺たちは勝つ、勝つ、勝つ!」と鼓舞したという。シンプルで、これ以上ない檄といえよう。檄といえば、藤田監督の檄もシンプルだ。89年、精彩を欠く投球を見せた
桑田真澄に対して「常に一生懸命、投げるのがエースだ!」と激怒。50年代から60年代にかけてのエースで、指揮官としても“先発完投”を掲げた藤田監督らしい言葉だ。
長嶋監督のあとを受けた原監督が2002年に掲げたのが「ジャイアンツ愛」だ。学生時代から巨人への入団を夢に、ドラフトでは4球団が競合しながらも抽選で自分が引き当てられることを疑わなかったというが、選手としても巨人ひと筋を貫き、引退セレモニーでは「私の夢には続きがあります」と語っていた原監督らしい言葉は、時代をさかのぼり、現役時代の原をも形容し得る名言といえそうだ。
文=犬企画マンホール 写真=BBM