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甲子園優勝の「看板」は過去のもの 法大で一つひとつステップを踏む新1年生左腕・古川翼

 

須江監督からの言葉


昨夏、仙台育英高で全国制覇を遂げた左腕・古川は2月4日、法大の練習に参加した


 仙台育英高の145キロ左腕・古川翼は法大に合格した際、須江航監督からこう言われた。

「夏の結果で注目されるだろうが、焦らず、自分のペースで、大学4年間でどういう選手になるかを考えて日々を過ごしてほしい」

 昨夏の甲子園では、東北勢の悲願である初の全国制覇に貢献。全5試合を継投の複数投手制(5人)で勝ち上がった中で、古川は背番号1を着けた。甲子園後はチームで唯一、高校日本代表に選出。全体集合日から3日後、8月31日の大学日本代表との壮行試合(ZOZOマリン)で合流したものの、コンディション不良により9月2日、メンバーから外れた。

「自分としては最善の準備をしてきましたが、背負うものが日の丸ですから……。ベストパフォーマンスが果たして、できたか。(U-18W杯が開催される)アメリカに行くべきではなかった、かと。首脳陣もその状態に達していないと判断されたわけで、仕方ないと思います。大学でまた、代表メンバー選んでいただけるよう、レベルアップしたいと思いました」

 仙台育英高で1学年上の早大・伊藤樹、立大・吉野が東京六大学の各校へ進み、活躍している姿を見て、神宮に憧れを抱いた。4月に法大の練習に参加。成長できる場であると、進学を志望し、スポーツ推薦で合格した。入寮は3月5日に控えているが、一日でも早く環境に慣れるため、野球部側が配慮。スポーツ推薦組13人は2月4、5日に練習参加した。「東京は温かく、体が動きます。仙台では後輩たちとも汗を流していましたが、こうしてチーム全体で練習できるのはやはり、良いですね」と、笑顔を見せた。

身近にいるライバル


 好きな投手はDeNA今永昇太

「力感がなくても、強いボールが投げられる。要所では打たせて取る。自分は特別、速いボールがあるわけではありませんので、守っている野手を信頼して、打ち取っていきたいと思います」

 カーブ、スライダー、カットボール、ツーシームはカウント球、勝負球としても使える。精度の高い、変化球を携えている。

 身近には、刺激になるライバルがいる。仙台育英高で3年間、切磋琢磨してきた左腕・斎藤蓉が立大に入学する。

「斎藤が活躍するのは、間違いない。自分も負けていられないです。でもまず、相手を見るよりも、法政大学野球部の雰囲気に馴染むことが先決かと思います」

優れたメンタリティー


 東北勢初の全国制覇。背負っていかなければならない「看板」だが、古川は冷静に語る。

「高校3年間、取り組んできた成果が甲子園優勝。自信はつきましたが、あくまでも高校野球での実績です。過去を振り返ることなく、大学では一からスタートしていきたい。まずは、リーグ戦でのベンチ入り。次はチームの軸と、一つひとつステップを踏んでいきたいと思います。結果として4年後、プロに近づけるように成長していればいいです」

 古川は冒頭の須江監督からのメッセージをよく理解している。現役時代に左腕だった法大・加藤重雄監督は「学校成績も優秀。クレバーな投球に期待しています」と目を細める。自身を俯瞰することができる。厳しい勝負の世界を生き抜いていく上で、すでに、古川には優れたメンタリティーが兼ね備わっている。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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