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肩、パワー、俊足は球界トップレベル…日本ハム・江越大賀は新天地で覚醒できるか

 

コンパクトな打撃で


キャンプの紅白戦で豪快な一撃を放った江越


 こんな打球を見たら、期待せずにはいられない。

 日本ハム江越大賀が2月5日、春季キャンプで行われた紅白戦に「九番・右翼」でスタメン出場。5回に左腕・長谷川威展の内角に食い込む148キロ直球をコンパクトに振り抜くと、打球は弾丸ライナーで左翼の芝生席へ。素質を見込んだ新庄剛志監督の要望で2022年のオフに阪神からトレード移籍し、秋季キャンプでは指揮官からつきっきりで指導を受けた。バットを短く持ち、振り回さずにきっちりとらえる。江越の能力を考えれば、きっちりコンタクトしたら打球はフェンスを越える。この一撃で得た自信は大きいだろう。

 俊足で肩が強く、長打力も抜きん出ている。その身体能力はプロ野球選手の中でも並外れていた。阪神に15年ドラフト3位で入団すると、プロ2年目の16年に4試合連続アーチを記録する。当時の金本知憲は江越の才能を高く評価し、三番に抜擢した時期もあった。江越は週刊ベースボールのインタビューで、「もっと打撃の質を上げていくことが必要です。そして毎日1本ヒットを打つことが、最大のアピールだと思っています。試合に出たら常にアピールしていく、その積み重ねで、スタメンに使ってもらえるんだと思っています。そして1本でも多くヒットを打って、チームの勝利に貢献したい。『自分が打って試合に勝つ』ことが一番の理想ですね。その上で、今シーズン2ケタ本塁打を打ちたいと思っています」と語っていた。

阪神ファンがかけ続けた期待


 大きなロマンを抱かせる選手だったが、ネックがあった。確実性に欠けていたことだ。同年は3、4月に打率.271、4本塁打、10打点をマークしたが、5月以降は快音が止まった。217打席で78三振は多過ぎる。ツボにはまった一発は大きな魅力だが、空振りが多いと、首脳陣も計算できない。シーズンを通じて72試合出場で打率.209、7本塁打、20打点。翌17年以降は50試合出場を超えたシーズンが一度もなく、守備固めや代走での途中出場が主な役割に。持っているセンスを考えるとこのまま消えてしまうのは惜しい。結果が出ない時も阪神ファンの期待は大きかった。

 お笑いタレントで熱狂的な阪神ファンで知られる松村邦洋氏とダンカン氏が週刊ベースボールの企画で19年の開幕前に対談した際、両氏が推奨したオーダーで「七番・中堅」に江越の名前が。松村氏は「外野は? 糸井嘉男がいて、福留孝介がいて、センターは8人ぐらいいますからね(笑)。でも今年は江越大賀が……。毎年、江越が、江越がって言ってますけど(笑)、うまく化けるような気がしますけどね。肩がある、足がある、パワーがある。これだけ身体能力の高い選手はいないですけどね」と期待を込めていた。

チームが求める打撃を


 だが、殻を破れない日々が続く。17年以降の打率は0割台、1割台と続き、20年以降は3年連続無安打に終わった。今年で30歳のシーズンを迎える。背水の陣を迎えた中、日本ハムにトレード移籍が決まった。

 俊足を生かした広い守備範囲、強肩、パンチ力のある打撃…そのプレースタイルは、現役時代の新庄監督と重なる。だが、大きな違いも。新庄監督は打率3割を超えたシーズンは1度もなかったが、時にはつなぎに徹するなど状況に応じた打撃能力が高かった。一方で、江越は安打以外にもチームが求める役割を打席でこなせていなかった。

 日本ハムの外野陣は近藤健介ソフトバンクにFA移籍。昨年首位打者に輝き、大ブレークした松本剛、若手成長株の万波中正今川優馬らライバルは多いが、江越も実戦で結果を残し続ければ、レギュラー獲りの可能性がある。プロ9年目――。北の大地で眠っていた素質は、新庄監督直伝の打撃スタイルで開花するか。

写真=BBM
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