週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

自らの野球観と合致する環境を選び続けた国学院大・赤堀颯 「どういう立場でも『赤堀あっての日本一』と言われたい」

 

究極のメンタリティーの持ち主


昨夏の甲子園で4強に進出した聖光学院高の主将・赤堀は国学院大の練習に合流している


 ライバルを聞いた。国学院大の練習に合流したばかりの赤堀颯(聖光学院高)は即答した。

「自分です!」

 その理由は、こうである。

「自分を突き動かすのは、自分次第。最後、手足を動かすのも自分の意思。熱い気持ちを前面に出して、血走っているような、火花が散っているような一挙手一投足を心がける。1球に対して全力でやる。それが、自分の野球スタイル。最高であり、最低の基準です。それができなければ、野球をやる資格はない」

 50メートル走5秒9、遠投110メートルの右投げ右打ちの遊撃手は、ストイックな姿勢を貫く。自らに厳しく、1年生とは思えない言葉が続く。究極のメンタリティーの持ち主で、リーダーシップが抜群である。

「毎年、4年生はラストシーズンを迎える。先輩方のためにも、自分たちの代をまとめ上げていく必要がある。試合に出場する、しないにかかわらず、力になりたい。自分たちの代になってから気持ちを入れるのではなく、今から、最終学年に向けた勝負は始まっている。多くの高校球児が国学院大を志望する中で自分を選んでいただき、入学させていただいた。この4年間で、恩を返さないといけない。大学卒業以降も野球が続けられるのは、ほんの一握りです。悔いを残さないように、一瞬を大事に、上を目指していきたいです」

 京都府出身。枚方ボーイズに在籍していた中学時代、3年連続で聖光学院高の夏の甲子園を観戦。同校のプレーに魅了されたという。

「1球への執念。泥臭さ。ロースコアの展開で、接戦をものにしていく粘り腰。食らいついていく聖光の野球に、見入ってしまった」

 自ら希望し、福島で心身を磨く決意を固めた。1年夏はコロナ禍で甲子園出場をかけた地方大会が中止。聖光学院高は目標を見失わず、県高野連主催の独自大会、そして、東北大会を制した。甲子園が消滅しても、変わらない熱量。赤堀は2学年上の精神的な強さを、目の当たりにした。しかし、2年夏、聖光学院高は県大会準々決勝で敗退し、2007年からの連続出場が「13」で途絶えた。同秋の新チームへの準備を進めるBチームの主将だった赤堀は、スタンドで無念の瞬間を味わった。

「自分たちの代はどうなってしまうのか……。焦りと、危機感しかありませんでした」


「食らいついていく」だけ


昨夏の甲子園では聖光学院高として、最高成績を収めた。赤堀のリーダーシップが原動力の一つで、斎藤監督は「今年はグラウンドに監督がいる」と評した


 聖光学院高・斎藤智也監督は「今年はグラウンドに監督がいる」と評し、主将・赤堀の存在感を認めていた。「監督が自分に任せてくれた。監督の信頼に全力で応えたい一心でした」。身を粉にして、一からチームを作り上げ、3年春のセンバツで2回戦進出、夏の甲子園は同校最高成績の準決勝に駒を進めた。

 1回戦から日大三高、横浜高、敦賀気比高、九州学院高に勝ち上がった。準決勝では同じ東北地区のライバル・仙台育英高に惜敗。仙台育英高は、東北勢初の全国制覇を遂げた。

「『死のブロック』と言われましたが、勝って成長することができました。自分たちはポテンシャルが高いとは言えません。総力戦。すべての試合で力を使い果たす。余力を残す試合なんて、ありませんでした。最後は力負け。決勝は仙台育英さん勝ってほしいと思い、見ていました。100年の歴史で初めてのことですから尊敬します。自分たちは後輩に日本一を託します。(東北初という)レッテルがなくなったので、目の前の試合に集中してほしい。死ぬ気で戦った先に、結果がありますので」

 国学院大への志望も、中学2年時、実際に神宮でリーグ戦を観戦したのがきっかけだ。

「家族で東都大学野球を見に来まして、その中で国学院大学の野球に惹かれました。聖光学院にも共通するんですが、粘り強さ。ロースコアを勝ち切る。東都は投手力が高く、投高打低の中で、エラーをしたら負け。接戦の中で戦う醍醐味を感じました。縁があって今、ここに立たせていただいている。周囲の方のサポートがあってこそ。感謝しています」

 4強に進出した昨夏の甲子園では一番打者として打率.400をマーク。侍ジャパンU-18代表に選出され、U-18W杯(アメリカ開催)では銅メダルを獲得した。赤堀は3試合に先発したものの、力不足を痛感したという。

「甲子園で少し自信がついたんですが、高校日本代表で鼻っ柱をへし折られました。遊撃手として出場できず、未熟さを感じました。ここから何としてでも、這い上がっていく。這いつくばってでも、上り詰める。あの高いレベルを見られただけでも収穫でした」

 国学院大に合流後も、大学レベルに圧倒された。「食らいついていく」。この言葉に集約される。最後に目標を聞いた。

「レギュラーでもないですし『日本一』なんて、語る立場にはありません。でも、目指すは日本一。ゲームに出ても、出なくても、必ず、チームの輪の中にいたい。どういう立場でも『赤堀あっての日本一』と言われるように、熱い気持ちを前面に出していく。選手として野球をしていく以上は、プロ野球を目指し続ける。今はとにかく、いち早く、先輩たちに絡んでいけるようにしたい」

 聖光学院高、国学院大と自らの野球観と合致する環境を選んだ。好きな言葉は「他喜力」。チームファーストの真摯な赤堀のカラーを打ち出せば、自然と人が集まり、特別な世界観が構築されていく。東都大学リーグには、入れ替え戦がある。もちろん、優勝を目指していくわけだが、一部残留というもう一つの戦いがある。明暗を分ける土俵際、修羅場で赤堀の力が必要な場面は、必ず訪れるはずだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング