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投手育成に定評のある国学院大で己を磨く冨田遼弥 目指すは4年後のプロ「上位指名を目標にします」

 

センバツで高めた評価


昨春、夏の甲子園に出場した鳴門高の144キロ左腕・冨田は国学院大の練習に合流している


 高校2年秋に四国大会準優勝。鳴門高の左腕エース・冨田遼弥は、翌春のセンバツ出場を有力の立場としていた。オフシーズンに入り、鳴門高・森脇稔監督と進路面談をする中で「大学進学」の意向を固めた。投手育成に定評のある国学院大を志望。冨田はこう明かす。

「鳥山(泰孝)監督とも話をさせていただき、大学卒業後に社会へ出ていく上で、人として成長できる環境だと思いました。自分で考える練習が多いので、責任を持つことになる。こうした思考力は将来的に大切になる。4年間で、人間力をつけていきたいと思いました」

 3年春のセンバツ1回戦。冨田は優勝した大阪桐蔭高を相手に3失点の力投を見せた。チームは1対3で惜敗も「インコースを攻めきれたら、全国でも通用することが分かった。コントロールにも自信がつきました」と、全国舞台で手応えをつかんだ。最速144キロのストレートをコーナーに集め、得意のスライダーを軸に、カーブでカウントを整え、追い込んでからはフォークもある。完成度の高い投球に、ネット裏のNPBスカウトも高評価を与えた。センバツ後、周囲は騒がしくなったが、冨田の意志が変わることはなかった。

「実際、あの1試合だけですので……。プロは考えられませんでした。まずは大学で4年間、しっかり鍛えることが必要である、と」

昨春のセンバツ1回戦では優勝した大阪桐蔭高に3失点[1対3で敗退]の力投。一気に評価を高めた


 春夏連続出場を遂げた夏の甲子園は、近江高(滋賀)との1回戦で敗退。冨田は7回8失点で、山田陽翔(現西武)とのエース対決に屈した(2対8)。2度の全国舞台で、チームを勝利へ導くことはできなかった。

「相手が相当、研究してきたのが分かりました。最後は我慢できず……。大学野球のリーグ戦は毎シーズン、同じ対戦校ですので、相手の対策を上回る投球をしないといけない」

先輩左腕を目標に


 鳴門高のサウスポーと言えば、2016年夏の甲子園で8強進出に貢献した河野竜生(JFE西日本−現日本ハム)が思い浮かぶ。3年間、指導した森脇監督は「体全体の強さ、肩の強さも、冨田とは比較にならない。コロナ禍もあり、3年間、十分な練習が積めていない」と話した。冨田は2020年入学。1年生は5月末に合流するはずが、冨田は体調不良により、大幅に遅れた。1年冬には両足のスネを痛め、満足に体を動かせなかった。2年春、夏と徐々に登板を重ね、自身の代となった2年秋に主戦としての立場を手にした努力家である。

 こうした基礎体力の部分からも「高卒プロ」の選択肢はなかったという。冨田にとって、NPBで活躍する河野は尊敬する先輩だ。

「忘れられないのは小学校6年時の卒部試合です。チームの先輩に鳴門高出身者がいて、サプライズで河野さんがそのゲームに登場したんです。対戦もさせていただきました。昨年の冬には、地元・徳島のジムで偶然会い、激励の言葉をいただきました」

 国学院大では、まずは体づくりに専念する。「先輩方とは圧倒的に体力が違う。焦らずに筋力、瞬発力をつけていく」。将来的には「チームを勝たせられる投手になり、日本一を目指したい」と目を輝かせる。

「個人的には150キロを出して、大学日本代表に選ばれるような実力をつけて、プロに行きたい。上位指名を目標にします」

 国学院大には「4年生野球」という合言葉がある。最上級生が率先して動く文化が定着。また、大学3年間でじっくりと鍛え、最終学年で素質を開花させる育成システムもある。早期デビューに越したことはないが、4年間をかけて学ぶ場がある。指導者、仲間に恵まれた世界が広がる。すでに甲子園で実証したように、冨田の潜在能力は間違いない。森脇監督は「芯がしっかりしているので心配はない。あとは本人が自覚を持ち、コツコツとやれるか。まだまだ伸びる素材です」と期待を込め、大学へと送り出した。冨田は地に足をつけて、日々の練習と向き合っていく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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